「岩宿」の発見 幻の旧石器を求めて (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (1973年1月15日発売)
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感想 : 15
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昔は読書感想文コンクールの課題図書にもなったらしいが、全く知らなかった。
読んでみたら、とても良かった。今の子供たちには、戦前戦後の貧しさを想像できないかもしれないけれども、家庭の愛情に恵まれなかった著者が、鎌倉で育つうち、古の世に思いを馳せるようになった心情はわかるのではないか。
発掘を始めてから、いろいろな「裏切り」にもあうが、恨みがましさはない。恵まれない境遇にあるからこそ、唯一心をときめかせるのが古代の謎だったということが伝わってくる。
表紙が地味だし、タイトルも今どきの子供が興味を持つようなものではないが、ぜひ大人が手渡してほしい。
『海辺の宝もの』も似た物語だが、メアリー・アニングは生活のために(売るために)発掘したわけだけど、相沢さんは、行商で生活をし、発掘したものは売らなかったというところが違う。アニングは古生物学者とは言えないが、相沢さんは、専門の教育を受けなかったが考古学者と言える。自分で研究し、仮説を立て、証明したのだから。昔のイギリス人ではなく、比較的最近の日本人の話だし、中学や高校の教科書に載ることもあるから、『海辺の宝もの』より薦めやすいかもしれない。フリガナ付きの子供向けがあるといいのにな。内容的には小学高学年から読める。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2016年12月28日
読了日 : 2016年12月15日
本棚登録日 : 2016年12月15日

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