『キリン解剖記』も面白かったが、こちらは海獣(+ラッコ、ペンギン)を網羅してあるので、読み応えがあった。
ストランディングして(浜に打ち上げられて)死んだイルカ・クジラの解剖は、やっぱりすごい。大きさもナガスクジラなどは地上の動物よりずっと大きいので、動かすにも重機が必要とかは、まあそうかと思うが、ストランディングしたものは死んでしまうことが多く(大型のクジラの場合、陸に上がっただけで自重で内臓が潰れる)、死んでかなり経ったものもある。その場合腐肉に潜って解剖するという。好きじゃなきゃできない仕事だよ。腐敗が進行してドロドロのこともあるとか。でも作業している間は気にならないって、本物。
鯨類と海牛類については、穏やかな生き方してるなあとちょっと羨ましくなったり。特にシャチが仲間を思いやる様子には胸打たれた。生まれ変わったらシャチになりたい。
しかし、鰭脚類のセイウチはハーレムを作って大きなオスが複数のメスを支配し、負けたオスは一生メスに近づくこともできないなど、なかなかハードなので、セイウチには生まれたくないなと思う。
とてもいい本だったけど、一つ引っ掛かったのは、素晴らしいテクニックと知識があり、絵の技術も一流である渡辺さんという女性が非正規であるというところ。それほどの人をなぜ正規で雇わないのか。高卒だと書いてあるので研究職は無理かも知れないが、それ以外の地位を与えるべきではないか。イラストも安く描かせてるんじゃないかと心配になった。こういう人を安く使うのは日本の役所の良くないところだと思う。女性研究者が少ないのも気になるが、ほんと人を大事にしない国だなと思う。
- 感想投稿日 : 2022年3月16日
- 読了日 : 2022年3月16日
- 本棚登録日 : 2022年3月16日
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