パラレルワールドもの。最初の章で認知症の老婦人の日常が語られて此処が並列世界の終点であることを匂わせる。
そこから過去に遡り同一人物の二つの人生が平行して語られていく。どちらかが劇的な人生と言うわけでもないのだが、明らかに世界観は異なる。
パットが生きる世界では限定的に核戦争が有り各地で死の灰が降る。それがパットの人生に大きく影響する。
一方トリッシュの生きる世界では横暴な夫のもと、不幸せな結婚生活を送り5人を死産し4人を育て上げる。その代わり世界は比較的平和である。
主人公であるパトリシア(パット、またはトリッシュ)の認知症が進み施設に入ったその時、二つの人生は混濁した意識の中で融合し始める。
3人の子供がいたり4人の子供がいたりするパトリシアの記憶を医者達は認知症で片付けようとするが、パトリシアは二つの人生がどちらもリアルに感じられる。
物語は劇的なオチも無しに唐突に終わる。ストーリーにSFらしさは全く無い、ただ物語の切り口がSFなのだ。これだけ読ませるのだから筆力も有る。
こんなSFってあるんだと感心することしきり。オススメです。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2017年10月31日
- 読了日 : 2017年10月30日
- 本棚登録日 : 2017年10月25日
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