富士山大噴火と阿蘇山大爆発 (幻冬舎新書)

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  • 幻冬舎 (2016年5月28日発売)
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この本のタイトルはなぜこのタイトルか、読み終わると解るようになっている。
 世界一の火山国、地震国である日本。そうなっている原因はせめぎ合うプレートにあるという。日本東岸の太平洋プレート、北海道から関東までが乗る北米プレート、糸魚川静岡構造線から西の日本列島が乗るユーラシアプレート、日本南岸に位置するフィリピンプレートである。
 地球上に14枚あるとされるプレートのうち4枚が日本列島の下か至近にある。これが地震のもとになっているのは周知の通り。
 では火山活動にはどのような影響を与えているのか。
 プレートが沈み込むときに水分が抜け、その水分が地中で温度が上がり周囲の岩石を溶かしながらマグマだまりを作る。そのマグマが地表から吹きだせば火山となるのだがそのメカニズムはいまだ推測の域を出ていない。
 日本には100以上の火山ある。先の御嶽山の噴火でもわかるように実は噴火の予測は非常に難しい。北海道の有珠山は数十年周期で噴火を繰り返すため精密に観測されていることと、専門の研究家がいたおかげで2000年の有珠山噴火の際には「今後144時間内に噴火の可能性大」と事前に警報を出すことができた。実際には警報発令から143時間後に噴火が起きたが住民は避難済みで人的な被害を回避できた。しかしほとんどの火山は観測下監視下になく予報のしようがない。
 日本の火山噴火の様式には山体噴火(山体に火口が開き爆発するもの。富士山はこちらのタイプ)、とカルデラ噴火(山全体を吹き飛ばすような大噴火が起き、広範囲に火山灰や火砕流被害がおよぶ、阿蘇山噴火が例)に分かれる。
 富士山の宝永噴火のエネルギーは2.1エクサジュールと推計される。一方でカルデラ噴火の例である鬼界カルデラ噴火のエネルギーは1600エクサジュールで圧倒的にカルデラ噴火のエネルギー量が大きく被害も甚大となる。日本で最後のカルデラ噴火となる鬼界カルデラ噴火は7300年前九州南岸で起こったがこの噴火により火山灰は遠く関東まで飛び、九州一円の生物は絶滅したとみられる。日本では過去12万年の間に7座が10回のカルデラ噴火をしている。これらの山は北海道と九州しかない。
 九州で阿蘇山噴火並のカルデラ噴火が起きれば、九州一円は火砕流に覆われ、ほぼ全滅する。また火山灰はその後の24時間で大阪のあたりでも50センチをこえる降灰となるはずで木造家屋は重みに耐えきれず全壊となる。道路は5センチ、鉄道は10センチを超える降灰があると使えなくなる。おそらく北海道東部を除き、交通は全く止まる。日本国民ほぼ全員が被災する災害となる。(北海道でカルデラ爆発がおきれば北海道は火砕流で全滅するが火山灰は太平洋に落ちるので総体の被害は少ないだろう)
 富士山や箱根が山体噴火をすれば関東一円には甚大な被害がでるだろう。
 火山研究の最新情報を知ることができ、面白く読んだ。
 また、地球で起きているプレート移動は他の惑星にはないという。(他の惑星は一枚のプレートでマントルがカバーされており、移動したりずれたりすることはない、と)その理由は地球には海があるから。
 「日本海・その深層で起こっていること」でも驚きをもって読んだことだが、太陽系の中で居住可能な星は地球のみ。その地球の上でこれだけ複雑な地質、海があるのは日本だけ。
 日本国や日本人が特別、とは思わないが、日本という国の特色に思いをはせて本を閉じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 数学科学
感想投稿日 : 2016年7月3日
読了日 : 2016年7月3日
本棚登録日 : 2016年6月12日

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