つらいなぁ、つらいよ、本当につらいよねぇ。
「自分」というアカウントからログアウトするのって、二つの意味があって。
別アカにログインすることで「自分」の中の「自分として認めたくない部分」を消化できるなら、それはいい意味のログアウト。
だけどログアウトした「自分」が本当の自分でないという認識であったら。ログインした別アカがたんなる抜け殻であるなら。それはどこにも本当のログ場所がないということになる。つらい。
容姿端麗、スポーツ万能、人格的にも申し分ない「塚森裕太」という自分。
だけどそれは本当の自分じゃない。そこに自分の芯になっているものがないから。自分の芯。それは「ゲイ」であること。
高校生の、ほんの17歳の少年が自分をゲイであると認識すること、それを受け入れること。その困難さを思う。
順番に語られる、塚森裕太の周りにいる5人のそれぞれの思いと現実。カミングアウトから始まる同じ時間と出来事をそれぞれの目から語られる。同じ出来事がそれぞれの目を通して一点に集約していく。重ねられるにしたがって濃く、細かく、見えてくる。塚森裕太の持つ、深く暗く大きな悩み。
完璧であること、それを隠れ蓑に自分の本質から目をそらしていた今まで。カミングアウトしても「塚森裕太」ならそれを軽く乗り越えられる、何と言っても完璧な塚森裕太なのだから。
そんなガラスのようなプライドとぎりぎりの自尊心。守れるのか、乗り越えられるのか。読むのがつらい、つらい。
最後の本人の章。涙が止まらない。必死でもがく塚森裕太を心から抱きしめたいと思った。よくやったと頭をくしゃくしゃとなぜてやりたい。
そして、一番語りたかったことを語らずに描く。うまいねぇ。
梅澤先生、あなたのおかげです。ありがとう。
- 感想投稿日 : 2020年10月23日
- 読了日 : 2020年10月23日
- 本棚登録日 : 2020年10月23日
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