遥かに届くきみの聲 (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社 (2020年8月6日発売)
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本棚登録 : 278
感想 : 20

いや、そんな部活があるなんて寡聞にして未知。お恥ずかしい。
朗読部。読んで字のごとく、文章を朗読する部活。
でもその朗読ってのが、予想以上に奥が深いものだったんだな、いや、驚きました。

子どもが小さいとき、毎晩毎晩絵本を読まされていた身にとって、声を出して本を読むことって身近なことではある。ほぼ絵だけの絵本からお話絵本になり、結構長い物語を何日もかけて読み聞かせていく。
地の文と会話文、主人公の心の声、それぞれに工夫を凝らして読んでいく。子どもの反応が楽しくて、結構好きだった、読み聞かせ。

でも、ここで描かれるのは、そういう楽しいだけの「読み聞かせ」ではなく、何十分も続き、そして競いあう「朗読」の技。
一編の物語を、一つの文章を、そして一つの言葉を、これほどまでに深く読み解いて、自分の解釈を加えて、そして声に出して、誰かに届けること。それはもう、ものすごく激しい戦いでもあるのだ。

学校によっては独自の部活ではなく、演劇部とのかけもちも多いだろう。けれど、身体を使う表現を伴う演劇とは違って、とにかく声だけの勝負なのだから、そりゃ深いわ。

主人公の透くんが、なぜ家を出て一人暮らしを選んだか。彼を朗読部に誘い込んだ遥の、彼への固執。
部内の先輩たちとの関係。
文科系部活特有の静かな熱が心地よい。
どこまでも自分自身と向き合い自分の中に答えを探していく彼らの戦い方が素敵すぎて。

声に出して読みたい青春小説誕生!!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2020年8月
感想投稿日 : 2020年8月8日
読了日 : 2020年8月8日
本棚登録日 : 2020年8月8日

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