万引き家族 通常版DVD(特典なし) [DVD]

監督 : 是枝裕和 
出演 : リリー・フランキー  安藤サクラ 
  • ポニーキャニオン
3.79
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本棚登録 : 954
感想 : 232
5

『万引き家族』(是枝裕和)
誰も見慣れた現象、それでいて意識して、あるいは無意識に見逃している社会の片隅にある現象。それを切り取って社会の姿を投影する是枝監督の得意とする描き方が現れている。
『誰も知らない』のときのように、社会のなかには、その存在の可能性は知っていても、多くの人には想像できない様な生活がある。いや、具体的に目を凝らせばそんな生活ばかりが存在している。
でも、私たちはなぜか普通の(綺麗で、諍いがなく、笑顔の絶えない、明るい)生活をみんなが生きていると思わされている。だから、小さな不幸のニュースが切り取られテレビやネットで報じられると『かわいそう。』と反応してしまう。想像力を膨らませば自分にも、自分の身の回りの誰かれにも、似た様な不幸は存在しているにもかかわらず。

そして、この映画に描かれる家族たちのほうが幸せで、美しくさえ感じてしまう感覚が随所に自分に襲ってくる。
この5人の家族は、万引きはするし、人のお金はあてにするし、人の目の届かないところでは幾らでもお金をくすねる。いけ好かないヤツらだ。
だけど、これは社会秩序を守るために私たちに擦り込まれた規範での世の中の見え方がそうさせている。
もし、私が彼ら家族の一員として幼い時から生活を共にしていたらそんな社会秩序は見えてこない。
ここにスクリーンの向こうとこちらの境目がある。
さて、後半の安藤サクラ、リリー・フランキーが報道陣からのインタビューや警察からの尋問に応える言葉の力と、テンプレートに用意された言葉しか投げかけられない報道陣の言葉や聴取という、解決の方向性が全くない型にはまった警察の言葉とどちらに真実があると感じただろうか。もっといえば生きる美しさを感じただろうか。

安藤サクラの生活感のある演技と最後に語る台詞がぐっと彼らの抱いている『幸せのイメージ世界』に引き寄せてくる。と同時に、
「普通の幸せ」という曖昧な存在の嘘が砕け散ったのを感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年4月23日
読了日 : 2020年5月31日
本棚登録日 : 2019年4月8日

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