命あるもの、必ず死は訪れます。
あらゆる価値観、定義が益々不透明になっている現代においても、(また、未来永劫)これだけは普遍性を保っていると言えるでしょう。
だからこそ我々は懸命に生きることが出来るし、喜怒哀楽を味わえるのだと思います。
本書『僕の死に方』の著者である「金子哲雄」さんのことは、テレビで拝見して、今までに見たことのないようなジャーナリストだなと思っていましたが、41歳の若さで亡くなられていたのは知りませんでした。
本書を読もうと思ったのは、ブクログの感想欄を拝見したのが切っ掛けです。新刊で購入できなかったので、ブックオフで手に入れました。
さて、本書の内容ですが、金子さんの生き方に対する矜持を最期まで貫いたことに、何よりも感服いたしました。
その生き方の矜持には、奥様をはじめ自分が愛する人々、公私共にお世話になった方々への感謝を忘れない、迷惑を掛けないという点をあの世に逝った後のことまで考えて行動されたということも含まれています。
私にもいつか必ず訪れるのですが、なかなか出来る事ではありませんね。
本書には、いくつもの紹介したい場面・文章がありますが、最も心を振るわせられたのは、奥様の「あとがき」に出てくる金子さんの臨終の場面・文章です。
この文章は、いわゆる並みの作家では書けないのではと思うほどでした。
あの世に向かっているんだな。
そのことがはっきりとわかりました。
・・・
そのうちに、いつものような寝息に近い状態になりました。静かな静かな寝息です。すーっと吸っては止まる。すーっと吐いては止まる。その繰り返しです。
そのリズムが、だんだんとゆっくりになり、そして止まりました。
最後の呼吸が止まった瞬間に、金子の体が物体になったのがわかりました。
金子の体はここにあるけれど、でも、金子がここにはいないことは、よくわかりました。
「ありがとう。お疲れさま」
最後に、(金子さんが眠る)東京タワーに立ち寄る機会がありましたら、稀代の流通ジャーナリストの在りし日の姿と本書のことを思い出し、手を合わせたいと思います。
- 感想投稿日 : 2024年3月18日
- 読了日 : 2024年3月18日
- 本棚登録日 : 2023年12月11日
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