十方暮の町 (カドカワ銀のさじシリーズ)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2011年9月27日発売)
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本棚登録 : 124
感想 : 19
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 60年に1度の辛卯の年、十方暮の10日間に神隠しが起きる……。遥か昔から続く怪異を防ぐため、謎の青年・慎治や郷土史研究家の赤沢が中心となって活動する。それに協力することになった中学生の和喜と高校生の仁美は……。


 図書館本。
『封じられた街』が合わなかったので本作もダメだろうなあ、と思いつつ借りてみた。やっぱりアカンかった(笑)。

 興味を惹かれるタイトルと表紙イラストで、ミステリアスなジュブナイルホラーかと思いきや……慎治さんスゲーぜリスペクトォォォ!!!って話だった……。

 とにかく登場人物たちが慎治を持ち上げまくる。和喜やしのぶに至っては、「いい人に見えた」と言うだけで、根拠となるものが一切描写されないため、説得力ゼロ。
 慎治は別の出版社から刊行された『あの世とこの世を季節はめぐる』が初登場らしいのだが、読んでいない身では前作をにおわされても、何のこっちゃ?である。

 大半が主人公の心情独り語りか、登場人物との雑談、そして「慎治さんがいかにすごい人か」を聞かされる。後は延々と公園にいるだけ。
 半ば辺りでようやく挙動がおかしい人や、変な音、靴だけが残っている怪異が出てきたものの、ほんの数ページ。
 本題に踏み込む怪異は、全体の3分の2を過ぎてから。そして、やっぱり慎治さん大活躍&よくあるパターンで終了~!
 登場人物がやたらと多いわりに、約2名がただいるだけだったり、和喜が大して活躍しなかったり、完全に脇役っぽかった人物に終盤になってからいきなりスポットライトが当たって急速深掘りされたり……。
 とにかく展開の緩急バランスが変で、慎治に比重が偏りすぎ。慎治ファンへのサービス作品にしか見えない。

 とはいえ、まとまりがイマイチなわりに『封じられた町』よりはずっと読みやすかった。
 ホラーとしての盛り上がりを求めるなら『封じられた街』、安心感のあるストーリーを求めるなら『十方暮の町』といったところか。


 どうも作者の価値観や感性が、私とは根本的に合わないようで……

・携帯を持っていて、月謝が安いとはいえ塾にも通っている和喜に、貧乏アピールされても素直に頷けない。
・料理上手な仁美に対し、『いいお嫁さんになるって、いまから決まってる。』という評価はあまりにも古臭い。
・和喜が自分の住む町を『鄙びた』と評する場面があるが、東京23区内の下町が鄙びているわけがない。
・図書館が『町の北の果てのほう』にあるという。しかし、23区内の街に“果て”のイメージは無いんだが。荒川沿いでもない感じだし。

 他にもツッコミたくなる部分が多々あって、なかなか読み進められなかった(笑)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2023年9月7日
読了日 : 2023年9月7日
本棚登録日 : 2023年9月6日

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