このシーズンにぴったりの話。
年齢も境遇も違う2人が惹かれ合い、それぞれの人生を変えて行く。
妖艶なケイト・ブランシェット、初々しいルーニー・マーラ、二人とも本当に美しい。
話はゆっくりと進み、二人が少しずつ距離を縮めてゆく様を丁寧に描く。
後半に入り幸福な時間が訪れた直後に話は急展開し、この映画がただのラブストーリーではなく、アイデンティティの話であることがわかる。
「自分らしく生きる」、よく使われる言葉だがそれは一体どういうことか。
自身を貫こうとすれば当然周囲との軋轢が生まれ、自分も周りも傷つき、大切なものを失うこともある。
性の問題に限らず、自分の根幹を構成するものを曲げるかどうかという視点に立てば、この映画の言わんとすることは特別なことではなく、自分にも当てはまる部分があるのではないか。
違和感を持ちながらも周囲に合わせて上手く生きることができたら、どんなに楽か。でもそうして自分の心を殺してまで生きる意味はあるのか。
物悲しい旋律のテーマ曲が何度も流れるが、あんなに切ないメロディーが、場面に応じて哀しくも喜ばしくも聴こえるのが不思議だった。
特に二人が結ばれる場面とラストシーンでは、旋律の揺れが二人の感情のうねりと重なっているようだった。
古き良きアメリカのファッションやラジオ音楽が、まだ保守的な時代であったことを思わせる。
時代は変わり、人びとの考え方も変わってゆく。
異端とされることも時が経てば普通になるかもしれない。
誰もが自分を偽らずに生きて行けますように。
クリスマスだ。
- 感想投稿日 : 2019年12月22日
- 読了日 : 2019年12月21日
- 本棚登録日 : 2019年12月21日
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