ユニクロや楽天が行なっている(たぶん、いつまでも続かないでしょうけど)英語の社内公用語化に象徴される英語支配の現状に警鐘を鳴らし、"日本語防衛"の方法を提言する本です。
書名の"防衛"は比喩ではなく、文字通り国防の意味です。このままの趨勢が続くと日本が滅びるというほどの危機感に、著者は突き動かされています。なにしろ、最初の一文がこうです——。
戦後、日本人は「愛国心」と「防衛意識」を完全に失ってしまいました。それを回復しようとして、私はこの「日本語防衛論」を書きました。日本語を愛すること、護ること。これが日本を愛する、護る第一歩です。日本の国防にはまず日本語の防衛が必須です。(序文。P.4)
ついていけないかなと思いましたが、展開に説得力があり、いまの日本の言語状況は危険だと思うようになりました。とくに、「自己植民地化意識」の指摘は真剣に受け止めなくてはならない指摘だと思います。
法律で日本語を護らなければならない(P.176)、という指摘は、この本を読む前なら突拍子もないと感じたでしょうが、英語社内公用化によって日本人が社内で日本語を使う言語権が奪われている現状を考えると、たしかにそういう必要もあるかもしれないと思えてきます。フランス、ポーランド、スウェーデンなどの例も紹介されています。
2006年、EU首脳会議でフランス代表者が英語で演説したことに怒って退席したシラク大統領(当時)のことばが印象に残りました。
一つの言語・文化による世界の支配など到底認められない。多くの言語があることはEUにとって確かに負担である。しかし、各国の存在意義はそこにあるのだ。(P.183)
ちなみに、話者人口を見ると日本語は世界で第8位、1億2500万人(2.1%)。これだけの人口があるからこそ、すぐれた文学作品も生まれたし、さまざまな知見が日本語で発表されているわけです。そのことにもっと感謝し、自信を持ち、母語を護る必要があると思わされました。良い本に巡り会えました。
- 感想投稿日 : 2012年5月15日
- 読了日 : 2012年5月10日
- 本棚登録日 : 2012年5月10日
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