イスラエル 人類史上最もやっかいな問題

  • NHK出版 (2023年2月25日発売)
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斎藤美奈子氏の「世の中ラボ」で紹介されていたので読んでみた。著者はアメリカのリベラルなユダヤ人コミュニティで育ったユダヤ人。1990年代前半にはイスラエルで暮らした。現在はサンフランシスコ在住。パレスチナの紛争は、黒でも白でもなく、グレーだという。

イスラエル-パレスチナ紛争については長いことイスラエル側の物語に接してきた。しかしパレスチナ人、さらにいえばイスラエル人も代弁はできないが、既存のものよりバランスのとれた細やかなアプローチを示すことができる、との弁。「イスラエルは常に正しい」派、「イスラエルは常に間違っている」派、どちらにも与せず、イスラエルに関して事態は黒でも白でもないと理解する手助けがしたい。要するにグレーである。

数年前、カリフォルニアでユダヤ人主催のキャンプでイスラエルの歴史について語った後、11歳のブランドンが言った「つまり、僕は生まれた時からずっと自分の家で暮らしてきた。ひいお祖父さんもそのずっとずっと昔のまたひい祖父さんも。ある日畑に出て家に帰ってみると、この人(隣に座っていた子)とその家族が僕の家の半分で暮らしている。『僕たちは遠く離れた町を追い出されたんだ。でもここは僕のひいお祖母さんのそのひいお祖父さんがはるか昔くらしていた場所なんだ』・・ってことで、どちらも正しいが、どちらもほかにいくところがない。こんな感じでいい?」・・なるほどこの紛争の核心をついている、と僕はブランドンに言った。

パレスチナ人とは?
最近の研究では、パレスチナ人は何世紀にもわたってパレスチナに存在してきたさまざまな民族や文明が混ざり合って生まれたのであり、そうした民族の中には聖書に登場する古代の住民も含まれている。この土地に住む人々は、時と共に、最も支配的な集団の宗教(土着、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)や言語(ヘブライ語、アラム語、アラビア語)を選んできた。・・対立している当の人々は、つまりユダヤ人の子孫なのである。

パレスチナ・・4世紀から7世紀は大半がキリスト教に。638年にイスラム帝国がパレスチナを征服すると19世紀までにほとんどの住民がイスラム教に改宗しアラビア語が主要言語となる。それ以後パレスチナの住民の多くはアラブ世界の一員とみなすようになった。

特に出エジプトの前はどうだったのか?が分からなかったので歴史の部分を読んだ。この本や他の本によると、旧約聖書の話にもなるが、ユダヤ人は元はメソポタミアの地に住んでいたが、神の声がありカナンの地・パレスチナに移ってきた。が飢饉などがありエジプトに移住した。が力をつけたユダヤ人を恐れたエジプト王に奴隷にされてしまった。そこでモーセが「出エジプト」を行い、再びカナンの地に戻った。
 パレスチナではダビデ、ソロモンといった王が出てユダヤ人の王国が栄えた。だがその後バビロニアに攻められ連行された(BC587バビロン捕囚)、その後ペルシアによって戻されるも、ローマ帝国が勢いを増すと、属国となり、反乱をするが(AD66-70)負け、国外追放され、ここから離散が始まった。


斎藤美奈子、世の中ラボ
https://www.webchikuma.jp/articles/-/3379

ダニエル・ソカッチ:社会活動家。イスラエルの民主主義を名実共に達成させるためのNGO「新イスラエル(New Israel Fund)」のCEO。同基金は、宗教、出身地、人種、性別、性的指向にかかわらず、すべての国民の平等を確立すること、パレスチナ市民やその他の疎外されたマイノリティの利益とアイデンティティの表現および権利のための民主的な機会の保護、イスラエルが近隣諸国と平和で公正な社会を構築し維持することなどを目標に掲げて活動している。

2021発表
2023.2.25第1刷 図書館

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カテゴリ: 本・歴史(世界史)
感想投稿日 : 2024年3月9日
本棚登録日 : 2024年3月9日

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