最高裁回想録 --学者判事の七年半

著者 :
  • 有斐閣 (2012年4月7日発売)
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感想 : 13
5

【レビュー】
これは一読すべき。法学部生でなくとも、およそ主権者たる国民は、主権の一部たる司法権の最高部で何が行われているかを知るべきだろう。結局そうした権力を構成するのは人間なのであって、人間くささが出ていることをよく知っておいたほうがいい。本書は読みやすさ、内容共に一級品である。
【特記事項】
・宝塚市パチンコ条例事件判決、行政文書開示情報単位論事件判決など、行政法学者にひょうばんわるい判決を立て続けに出した第三小法廷に配属された。
・川口順子外務大臣(当時)とは、中学校以来の幼馴染。
★上層部の関係はすごいなあ。
・大法廷にも書記官室があるが、大法廷係属事件がないときに大法廷書記官が何をしているのか疑問に思って聞いたら「それは良い質問である」との返答。
★一体何をやっているのか知りたいなあ。
・「裁判長による期日外釈明」
・最高裁における口頭弁論はすべてしっかりと決まっており、時間も厳守で、儀式のよう。
・ありていにいえば、日々の事件処理に追われる余り、死刑制度の適否を合憲性のレベルで深く考察する時間的余裕がなかった
★最高裁裁判官がこう吐露してしまうくらいだから、本来これは大変まずいことだと思うが、仕方ないのだろうか。やはり事務作業軽減を図って上げて、真の憲法の擁護者たるべきようにさせるべきだろう。
・「不受理」は上告棄却とは全然違い、最高裁として何ら判断を下されていないという意味なので、このところを勘違いしないように。
・非嫡出子の相続分違憲問題も、学界は違憲合憲を論じるより、最高裁が違憲と判断した場合の後処理の問題を論じるべきだろう。
・「●●判例に徴して明らか」とする場合があるが、徴して、は意味があいまいで、ある事件でそれはおかしいと個別意見で指摘しようとしたら調査官から懇願されたのでやめた。
・ドイツの連邦憲法裁とおうしゅうじんけんさいばんしょの間には確執がある。
・憲法訴訟に関する憲法学者の発表で一番よくわかったと評判だったのは、戸松秀典によるもの。
・最高裁判事は、まず人事局長と内閣官房副長官の間で、次に事務総長と内閣官房長官との間で順次レベルアップした調整が行なわれる。最高裁長官と内閣総理大臣の折衝の際はすでに決まっている。
・牛込の長官公邸は、昭和の初めに富山の北前船廻船問屋馬場氏が、その子女の東京遊学の居所として建てた。
・長官代行になると、皇室会議への出席や、天皇外遊時の空港へのお見送りなどもある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 法律
感想投稿日 : 2012年8月7日
読了日 : 2012年8月7日
本棚登録日 : 2012年8月7日

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