オイディプスの謎 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社 (2011年7月12日発売)
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感想 : 2
5

ソポクレスの『オイディプス王』についてより深く知ることができた。また、分かりやすい解説のおかげで『オイディプス王』の面白さや真髄を発見できた。

「ペリぺテイア(どんでん返し)」と「アナグノリシス(発見)」が優れた物語にはあるということを知り、確かにと思った。人気のある漫画や小説には必ずある要素だと気づくことができた。
現代でも通用する物語の構成に必要な要因が、何千年も前に規定されていたということがしみじみと凄いと思う。

スフィンクスの謎かけの答えである「人間」に関する考察に目が覚めるような心地がした。特に四本足に関する言及だ。
四本足とはすでに人間以下である四本足の獣と同等の本質を兼ね備えてしまっていたオイディプスのことであり、このことから他の二本足、三本足も運命に翻弄されるオイディプスのことをよく表していると書かれていた。
ただの答えとしてでは無く、運命に翻弄されるオイディプスのことを示唆しているという点にはっとさせられた。

当時のアテネ人へ向けてのソポクレスのメッセージである『オイディプス王』については感動した。
サラミスの海戦でとびきり優れた人種だと、自信に満ちたアテネの人々が敗戦し、病によってかんたんにヒューマニズムが踏み躙られ、それこそ獣と同等になったアテネの人々。絶望渦中で、ソポクレスはそれでも気高い心を持って生きていけというメッセージを、『コロノスのオイディプス』として書き上げ、彼らに遺言として残したという点にとても感動した。
この作品はどの時代とも吻合しうる物語なのだと感じた。
どんなに悲惨で救いようのない運命でも受け止め、屈してはならないと、鼓舞されているように感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年8月26日
読了日 : 2022年8月26日
本棚登録日 : 2022年8月26日

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