([か]8-1)北里大学獣医学部 犬部! (ポプラ文庫 か 8-1)

著者 :
  • ポプラ社 (2012年4月5日発売)
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感想 : 60
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映画を見てからの読了。映画とはとても違うストーリーで、どちらかと言うとルポな感じ。あとがきを読む限り、連載を一冊にしたものらしい。

映画では主要登場人物は限られ、彼らの成長を描いた印象だったが、本作は数多くの学生がそれぞれの動物や状況によってどう変化していくか、何を考えていたか、を描いたものだ。どちらにしても面白かったが、印象が違ったのがまた面白かった!

動物実験を避ける流れや、ベジタリアンの普及、保護犬・保護猫の認知の広がり、そして多様性の受容で、動物の命の重みをやっと感じられるような世の中になってきた。その流れを作ったのは、本作をはじめとする作品ひとつひとつなのだろう。本作の舞台となった北里大学でも、海外に遅らばせながら外科実験は無くなったようだし、社会の流れとともに動物だから何をしても良いという風潮はなくなりつつあるだろう。解説にも書かれていた、部員たちへの感謝はわたしも深く感じた。本当にこうやって自分の生活を削りながら他者のために生きられるのってすごい。部員たちのアツい思いと共に、作中のさまざまな動物たちの姿に癒された作品でもあった!ありがとう。

p.32 放浪している時間がなかったり、野良犬として生まれ育った犬は、人間への警戒心や恐怖心が人気は強い。しかし、太田は、これまでの経験から、そんな人間不信の犬でも、絶対に飼い犬として幸せに暮らせるようになると考えていた。

保護犬たちに、ベタベタした以上は必要ない。これまでに過酷な環境で生きてきた。動物にとって、1番必要なのは、自分のペースで過ごさせることだ。だから、毎日の生活の中で、食事や散歩等の世話以外で干渉する事はあまりない。それでも自分から近づいてきたら、慣れてあげれば良い。あえて何かするとしたら、かわいいと思いながら1守位だろうか。大切なのは一緒に暮らすこと。それだけで犬も変わっていく。何かを感じてくれるのだ。

p.53 ハナコは、母性本能が強い、心優しいリーダーだった。彼女を等分にした優劣順序に従うことによって、保護された犬や猫は、それぞれ居場所を見つけて、心穏やかに過ごすことができるのだ。犬猫にかかわらず、新入りが来るたびに、ここです。暮らすためのルールを教えるのは、花子の役目だった。トイレは決まった場所でする、眠るときはゲージに入る、部屋にあるものをむやみに、噛んだり、引っ掻いたりしない、テーブルに置かれた食べ物に触らない、自分より力の弱い動物には優しくする。これらは、一般の家庭で暮らすためのルールでもあって、身に付けていれば、新しい飼い主が決まる確率は格段に上がる。いつも15頭前後の動物が集まっていながら平和が保たれているのは、ひとえにハナコのおかげだった。

p.56 ハナコは世話好きではあるけれど、出産の経験は無い。子犬を連れて行ったところで、どうなるのか。そんなことが解決につながるのか、誰にもわからない。しかし、他に出来る事もない。今は、犬部唯一の犬部員の判断を仰ぐしかなかった。どうか、よろしくお願いします。太田と池田がそんな思いで見守って、まもなく、ハナコは子犬たちはペロペロと舐め出した。そして、当たり前と言う顔で、自分の側にしっかりと引き寄せた。これで、温度調節の心配だけは何とか解決された。

出産のショックなので、母犬が死んでしまうと、子犬たちの世話を母親の姉妹犬たちが引き継ぐことがある。そんなことを本で読んだような気がするけれど、実際に目の前で起こって見ると、それは生命の神秘としか言いようがなかった。深刻な人手不足と資金不足に落ちた犬は、犬部員ハナコによって救われたのだ。

p.70 「この事なら、楽しく暮らせそう」そう感じた人々のもとで、まもなく、猫たちは新しい生活をスタートさせるのだ。引き取り先が決まることを犬では卒業と呼ぶ。入部して、初めて経験する別れの日。新しい飼い主さんの前では、絶対に泣かない。そう決めていても、ほとんどの部員は涙をこらえることができない。最高に嬉しいけれど、でも、やっぱり寂しい。アパートに帰って、さんざん遊んでいたおもちゃがぽつんと転がっていたりすると、もう耐えられない。譲渡した日の夜、自分のアパートで1人で過ごせる部員は、ほとんどいない。その晩は、仲間と一緒に卒業生の事について語り明かすのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年3月5日
読了日 : 2023年3月5日
本棚登録日 : 2023年3月5日

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