働いて、美味しいご飯を食べて、彼氏や時に他の男と幸せなセックスをして、のらりくらりと過ごす女の子と、彼女のゆったりしたどこか退廃的な生活そして「なんとなく、クリスタル」=半透明で中途半端な心情。当時の大学生特有のモラトリアムを圧倒的な筆致(+本文と同じくらい主観に富んでのらりくらりとした註釈)を描いたとにかく「すごい」小説。どちらかといえばスロー・テンポなのに、彼女の気持ちを独特な間で挟み込むことで、(いい意味で)「変な」奥行きが出ているというか…。不思議。取り敢えず年齢層に似合わず単なるYA青春小説ではない。アンニュイとか気怠げとかの言葉が相応しいようにも思える。
何というか、今でもとにかく「すごすぎて」うまくまとめられない…巻末にある高橋源一郎の解説まで是非読んでほしい。それこそ田中康夫と彼の筆致の「すごさ」が明確に書いてあるから…。
蛇足だがオーガズムを何度も「高圧電流」って言っちゃうところとかは、女の快感に対する作者の男臭さが出てて笑えた。少し。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年2月21日
- 読了日 : 2021年2月21日
- 本棚登録日 : 2021年2月21日
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