超訳 カーネギー 人を動かす エッセンシャル版 ディスカヴァークラシック文庫シリーズ
- ディスカヴァー・トゥエンティワン (2020年11月20日発売)
『カーネギー・ホール』で有名な鉄鋼王アンドリュー・カーネギーと同一人物だと思っていたら違うひとだった。
ただこの方デール・カーネギー氏はアンドリューを尊敬しているらしく、つづりを彼と同じCarnegieに変更し、カーネギーホールで講演も行ったとのこと。
人間の質を根っこから変えるというよりは、ややテクニック寄りの本。
自分の自慢話をするよりも人の話を聞く、他人の欠点を指摘するよりも長所をほめて自尊心を満たさせる、自分にしてほしいことを相手に対してまず行うなど、この本に書かれていることはすぐ実行でき、即効性はあるかもしれないが、エッセンシャル版だからか、どうしても読み応えが軽い。
売れない営業担当が単に客の話を聞くようにしただけで契約が取れただとか、うわべのお世辞だけで簡単にひとが態度を変えたかのような話がいくつかある。
(ちなみにこの本でも『お世辞は不誠実だ』と言ってはいるのだが)
当然のことながらこれ一冊読んだところで『人を動かす』ことなどはできない。
あくまで『人を動かす』本編に興味をもたせるための入口にすぎないだろう。
デール・カーネギー自身はソクラテスからナポレオンまで幅広い人物のエピソードを紹介しており、哲学から歴史、政治経済まで、厚く積み重ねた教養がうかがえる。
本当に人を動かしたいなら、一冊二冊、はやりの自己啓発本を読んだだけでは不十分であり、さまざまな良著を読み、かつ実践を重ねる必要があると、デール・カーネギー自身が暗に示しているように思う。
しかしやはりアメリカの人だけあって、リンカーンやセオドア・ルーズベルト、ベンジャミン・フランクリン、実業家のチャールズ・シュワッブなど、米国人の立志伝からたとえ話を多く引き出しているのが新鮮で興味深かった。
自己批判のところは特徴的。
日本人なら間違いをみとめて謝るのは普通のことだが、この本では率直に謝罪することが、ものすごい功績のように書かれていたりする。
また一日十四時間も働くことが美徳の一つのようにみなされている記述もあり、このあたりはむかしの価値観だと思って読む必要がある。
- 感想投稿日 : 2023年12月20日
- 読了日 : 2023年12月20日
- 本棚登録日 : 2023年12月20日
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