皮膚感覚と人間のこころ (新潮選書)

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  • 新潮社 (2013年1月25日発売)
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特に1番印象的だったことは、視覚障害者が舌になんらかの圧を加え、学習させると、ボールをバットで撃てるようになること。
舌はご飯を食べる時にも使うし、キスをする時にも使うけど、確かに感じると言うことに全てが集約されてるのかも。
視覚・聴覚は記号化できるけど、触覚と嗅覚だけは確かに人によって感じ方が違う。おもしろい。


以下記憶したい部分を抜粋。

顔面フィードバック・・・自分の顔の表情が、その感情を誘導する
口が笑っている形になるだけで、人間はより楽しい気分になる
拒食症患者は健常者に比べて、触覚による図形の把握が下手

不幸な幼少期を送って脳構造にその影響が残ったとしても、あるいはうつ病になりやすい遺伝子を持っていても、その後の生き方の選択によって、幸福な人生を得ることができる。

毛づくろいがサルに快感をもたらす

毛繕いをしながら学習すると学習効率が高くなる

男性より女性の方が、肌や髪の荒れに対して不快に感じる

言葉を駆使できるようになるまで、人間は触れ合うことによって相手の気分や意識を察していたのかも。

マッサージはエイズを治す細胞を増やすことができる、メカニズムは明らかになってないが、実証例がある。

皮膚のケアが心のケアにもつながる
肌が乾燥してると、心も不安症やうつになったりする

糖をなめるだけで、自己意識が変わる。排卵期の女性はより肌を露出させる

相手がなければ自分というものもなく、自分がなければさまざまな心も現れようがない。これこそが真実に近いのだ。「荘子」

右脳に言語能力はない。言語による説明は左脳でしかできない。
左脳が、さまざまな情報から辻褄の合う関連性を構築する役割を担う(情報処理能力)

自分で自分に触れた時より、他人に触られた時の方が心地よく感じる、という報告がある。
誰が触ったかが大きな影響を及ぼす。

意識は脳という臓器だけでは生まれない。身体のあちこちから、もたらされる情報と脳との相互作用の中で生まれている。
つまり皮膚感覚は意識を作り出す重要な因子。

五感がもたらすさまざまな刺激のうち、皮膚感覚ほど個々の快・不快を惹起(じゃっき)するものはない。例えば性的な接触は強烈な快感をもたらし、逆に皮膚の痛みや痒みは、堪え難い不快をもたらす。

システムの中で生きてる人間を(視覚や聴覚は電気信号に変化しやすい)皮膚感覚は突然、個人に戻してしまう。皮膚感覚が個人の意識に結びついていて、自己と他者を区別するという重大な役割を担っている。

視覚障害者に舌への圧刺激で入力された情報は本来、視覚情報を受け持つ領域で処理される。ボールをバットで打つことができるようになる。

脳の感覚は五感それぞれで部位は異なっていゆが、それらは固定されたものではなく、状況によって使い方が変わる。

皮膚感覚は個々の意識の影響を受けやすいものだが、視覚の代わりを担える。

外部の世界を最初に認識するのは皮膚感覚。

化粧行為の中には、身体運動を引き出す効果、皮膚へのマッサージ効果、香料が嗅覚を通じてもたらすストレス緩和効果をもたらす。
メイクアップとスキンケアをすることは、コミュニケーション能力の有意な向上がある。

認知症の女性も失われつつあった身体意識を取り戻し、認知能力、コミュニケーション能力、運動機能の回復。食事、着替え、ベッドや椅子への移乗の能力も改善。手の握力も向上。

身体と世界との境界である皮膚を彩るという行為。古い時代には、体を彫るイレズミが行われていた。その記憶が身体の奥深くに残っているのではないか。

人間にとって美しくありたいという欲求は、食欲にも劣らない欲求。

数学を駆使できる人間は、創造主に近づくことを許された存在なのかもしれない。

単なる観察では人間が予想できなき事柄について、ある程度までなら予見することも可能。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年1月5日
読了日 : 2021年1月5日
本棚登録日 : 2021年1月5日

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