なきむし せいとく: 沖縄戦にまきこまれた少年の物語 (童心社の絵本)

  • 童心社 (2022年4月25日発売)
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1945年の沖縄。国民学校2年生のせいとくは、いつも泣いているので、みんなから「なちぶー」と呼ばれている。おとうも、中学生のけんとくにぃにぃも、戦争に行ってしまった。戦いの準備を始めた日本兵に、一番上等の芋と黒砂糖を持っていくと、日本兵は、わしらがお前たちを守ってやるから、もっと持ってこいと言う。
3月の終わり、この辺りも危ないと、母と妹の3人で、南へ逃げることになった。毎日、毎晩、爆弾の中を逃げ回り、ガマ(洞窟)に入ろうとしたら、日本兵が立ち去れと言う。
4月になり、アメリカ兵が上陸。機銃掃射、艦砲射撃、日本軍とアメリカ軍の戦いの中で、島の人たちは死んでいった。やっとガマに入り、眠ったとき、恐い夢を見て泣いてしまったせいとくに、日本兵が怒鳴った。その声に驚いて泣き出し、泣き止まない赤ちゃんを、日本兵は切り殺した。
5月、ガマを出たせいとくたちが、焼け残った家に入ろうとしたとき、艦砲射撃が命中して、アンマー(母)は死んでしまう。その時、日本兵の斬りこみ隊とアメリカの戦車の衝突に巻き込まれ、せいとくは、アメリカ兵に助けられたものの、左手を失った。アンマーも死に、けいとくにぃにぃも戦死し、ひとりぼっちになったせいとくは、泣かなかった。
せいとくは、アメリカ軍の収容所の孤児院に入り、青空教室で学んでいると、離れ離れになっていた妹が帰ってきた。
戦争が終わって10年、高校生になったせいとくたちが作った畑は、アメリカに取り上げられ、軍事基地にされた。(49ページ)

※沖縄について丹念に取材を続け、絵本を書いてきた田島征彦さんの文章は心打つものがありました。絵は迫力はあるけれど、気持ち悪いとは思えない描写で、すごい作品だと思います。でも、図書館の新刊で、すぐに借りたものの、あまりに辛くて、レビューが書けませんでした。
それでも、この夏のNHK特集で、「久米島の戦争」を見て、やはり書いておきたくなりました。「久米島の戦争」は、日本軍が、アメリカ兵のスパイと決めつけた島民20人を、赤ちゃんも含めて一家皆殺しにした事件でした。(田島さんの絵本の中の年表にも記されています。)
私がつらくなるのは、二つのことです。戦争の中で日本兵が行ってきたことと、今も、アメリカ軍基地の多くが、沖縄に存在し続けること。
この絵本の中で、せいとくが言う言葉。「今はアメリカーに、占領されています。でも、沖縄が日本に戻ったら、こんなものはすぐなくしてしまうさぁ。だって、戦争の苦しみを一番知っているのは、ぼくたちなんだから。」
沖縄以外の県に住む私が、事実をまず受け止めることから逃げないようにしようと思っています。

読書状況:積読 公開設定:公開
カテゴリ: 普通絵本
感想投稿日 : 2022年8月29日
本棚登録日 : 2022年8月18日

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