キューバ危機発生を半世紀を経た現在において総括した良書。
学術的な書籍ではあるものの読みにくさはなく、簡潔かつ丁寧な文章で記述されており、非常に読みやすい。
本書は以下の3点が優れており、歴史解説の良き手本と言えると考える。
1) ソ連/キューバ/アメリカのどの国にも肩入れしない視点で記述されている事。
2) 上記1)を含め、特にキューバ危機の背景である、キューバ/アメリカ間の軋轢の歴史を解説している事。
3) 資料をベースにした実証的な視点で事実に基づき分析がさせている事(=分からないことは率直に分からない事として扱っている)
以下、本書における備忘メモ
・危機/問題を解決するためには相互理解が重要である事。
→ それを怠ったとき、希望的観測や相手側に自分の姿を投影するミラー・イメージングに基づく間違った判断により危機が招かれうる。
・重要な判断をするにあたり冷静な視点で選択肢の検討/吟味を行う期間を設ける事。
→ 緊張的な状況下における即時的な判断は破滅的な結果を招く機会となりうる。
・巨大な組織になると末端のコントロールまでは出来ない事。
→ 特に緊張的な状況では通常では発生しない問題が起こり、それが危機的な結果をもたらしうる事。
・大国が小国の要求/欲望/ものの見方を無視した結果、危機を招くという教訓。
→ 弱い国であっても外部からの干渉に怒り/抵抗し、弱い国であっても大国に人的/経済的な被害を与えるくらいには強い事(ベトナム/アフガニスタン/イランの事例)
- 感想投稿日 : 2017年5月5日
- 読了日 : 2017年5月2日
- 本棚登録日 : 2017年5月5日
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