白蝶記 3 ―どうやって獄を破り、どうすれば君が笑うのか― (ダッシュエックス文庫)

  • 集英社 (2016年9月21日発売)
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感想 : 3
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るーすぼーいの作風からして、そして表紙やアオリからして、ハッピーエンド以外考えられないが、ともかく大団円でよかった。

でも作者の代名詞でもある大逆転劇は、ちょっとインパクトが弱かったように思う。
これまでのるーすの作品には、知的で優秀な主人公と、それを上回るかっこいい悪役との対決があった。
個人の能力にしろ、持っている手札の量と質にしろ、1枚も2枚も主人公を上回る悪役に対して、どう振舞うのか。
繰り返されるどんでん返し、そして最後の逆転劇が見どころだった。

2巻までは時任がその悪役として君臨していた。
彼女との戦いはハラハラしたし、主人公たちは芯の強さも見せてくれた。

ところが、2巻の最後で更なる強大な悪役として登場した室井がよくなかった。
いや、小物だったというわけではないのだが、肝心の対決があまり見られず、魅力的な悪役に映らないのだ。

それに、2巻まで敵対していた時任と手を組むのだから、もっと知的な戦いやどんでん返しの連続になるかと期待していた。
しかし、二人を上回る強敵が現れないので、その能力を発揮する機会がなかった。
室井は病気で動けないし、裏切るかと思われたあのヤクザも動かないし。

おなじみの芯の強いヒロインも、陽咲よりも朱理のほうが近かったかも。
あんまり陽咲の見せ場がなかった。
そのせいで、「無関心であれ」という室井と、「主人公のことだけを考えていた」陽咲の対比もうまく活きていなかったように思う。

「黒い蝶の章」のような、るーすらしいやり口が見れたし、普通に面白い。
でも、期待値が高かっただけに……という感想。

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読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年10月7日
読了日 : 2017年5月27日
本棚登録日 : 2020年10月7日

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