るーすぼーいの作風からして、そして表紙やアオリからして、ハッピーエンド以外考えられないが、ともかく大団円でよかった。
でも作者の代名詞でもある大逆転劇は、ちょっとインパクトが弱かったように思う。
これまでのるーすの作品には、知的で優秀な主人公と、それを上回るかっこいい悪役との対決があった。
個人の能力にしろ、持っている手札の量と質にしろ、1枚も2枚も主人公を上回る悪役に対して、どう振舞うのか。
繰り返されるどんでん返し、そして最後の逆転劇が見どころだった。
2巻までは時任がその悪役として君臨していた。
彼女との戦いはハラハラしたし、主人公たちは芯の強さも見せてくれた。
ところが、2巻の最後で更なる強大な悪役として登場した室井がよくなかった。
いや、小物だったというわけではないのだが、肝心の対決があまり見られず、魅力的な悪役に映らないのだ。
それに、2巻まで敵対していた時任と手を組むのだから、もっと知的な戦いやどんでん返しの連続になるかと期待していた。
しかし、二人を上回る強敵が現れないので、その能力を発揮する機会がなかった。
室井は病気で動けないし、裏切るかと思われたあのヤクザも動かないし。
おなじみの芯の強いヒロインも、陽咲よりも朱理のほうが近かったかも。
あんまり陽咲の見せ場がなかった。
そのせいで、「無関心であれ」という室井と、「主人公のことだけを考えていた」陽咲の対比もうまく活きていなかったように思う。
「黒い蝶の章」のような、るーすらしいやり口が見れたし、普通に面白い。
でも、期待値が高かっただけに……という感想。
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- 感想投稿日 : 2020年10月7日
- 読了日 : 2017年5月27日
- 本棚登録日 : 2020年10月7日
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