ネット連載でも好評だった(らしい)シンエヴァをめぐる三部作が収録された6巻である。
旧エヴァ時代のファンだった化学担当の江波先生の思い出を軸に展開されるエヴァ編は、大人のじくじくした恋愛を描いた名作回だ。
かつて存在したエヴァンゲリオン研究部での、ギャルな先輩・中峠との微妙な(エヴァを通じた)関係性は、中年層にちょっと刺さりすぎる鋭角である。
結末まで含めて、実に充実した三部作だった。
ちなみに書籍版描き下ろし「GAMERA1999」ではそんな二人のデート風景が描かれた回となっているので、ネット連載読者にもお勧めしたい回である。
しかし、中峠先輩は絶妙に大人美人感のある素敵なギャルであり、オタクに優しいギャルをお求めてのオタクも満足なキャラ造形だろう。
そんなの関係なく、普通に優しい先輩としても素敵な先輩だとは思うが。
エヴァ以外でも、邦画の「スマホを落としただけなのに」や時代劇系コメディを総括した「サムライマラソン」、あるいはドラ泣き解説の「STAND BY ME ドラえもん」など、ネタは濃厚である。
特にマニアックな「ネズラ1964」や「GAMERA1999」といったドキュメンタリー映画の紹介もまた面白い回だった。
海外物でも「パッドマン」(※バットマンではない)は興味深い作品の紹介である。
意義深いテーマの映画でありながら、インド映画特有のパワーを感じられる紹介はさすがの一言である。
邦キチさんと部長の微妙な関係もまた、演劇部を通じてさらに微妙さを増している。
その合間に登場した演劇部部長・初台真琴もまた、良い感じにキャラの立ったヅカ風キャラ。
彼女の「イケメン風女子が見せる女の子らしいムーブ」に心ときめいた読者も少なからずおられただろう。良いキャラである。
今回も楽しく読ませていただいた。星五つで評価したい一巻である。
細かいところだが、あとがきとして書かれた文章もまた質が高い。
これだけでも(ネット連載読者も)単行本を買う価値があるかもしれない、創作する人にはとても大事な心得が読めるあとがきだった。
そこも加味すると、星六つで評価した方がいいかもしれない。
なお、シーズン7も連載が完了したようなので(2021年12月現在)、次巻も楽しみに待ちたい。
- 感想投稿日 : 2021年12月17日
- 読了日 : 2021年10月3日
- 本棚登録日 : 2021年12月17日
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