表紙にも起用されたカルチャーヘッズ(自称)の映画好き大学生・池ちゃんが新登場する7巻である。
毎回切れ味鋭く邦画を紹介していくこの漫画、今回は切れ味が鋭いどころか核心を貫くような発言が連発され、読んでいて実に刺激的だった。
今巻で中心的なのは池ちゃんだ。
プールで女子高生グループをナンパする大学生の一人、という立ち位置からしてアレな彼だが、そんな彼のウザめなキャラ性と、それとは裏腹な意外に真剣な彼の悩みが後半のトピックとなっている。
中年世代の恋愛メインとなったエヴァ編の三部作とはまた一味違った「花束みたいな恋をした」三部作は、本当に刺激的だった。
偶然にもヒッチコックの言葉を踏襲した邦キチの返答は、実に味わい深いものがあった。
ただ、それ以外も濃厚。読み応えがヘビーな巻である。
特に「新解釈・三國志」における福田映画解釈などは舌鋒鋭く、まさに見るべき批評の類だろう。
語られている内容は結構なものなのに、読後に映画未見の読者をして
「……ちょっと観てみようかな?」
と思わせるのだから、この作品のエネルギッシュなレビューは凄まじいの一言だ。
主人公二人のイチャイチャ感が半端ない「恐怖人形」や、批判に傾き過ぎない際どいバランスで核心を突く「映画 えんとつの町のプペル」なども素晴らしいレビューであった。
相変わらず最高に面白い。
この作品で完結していることもさることながら、題材になった映画への関心を引くことにかけては人後に落ちない作品だと改めて思い知った。
文句なしに星五つ、もうちょっと言うと星八つくらいで評価したい巻である。
なお、ごく個人的な感想で恐縮だが、池ちゃんの性格は他人に思えず、なんとも言えない気分になった点は付記したい。
彼を否定的に描かなかった点で、やっぱりこの作品は凄いなーと思う。
ナンパ野郎のウザキャラもきちんと作中の関係性に落とし込む手並みは、普通に感心させられた。
- 感想投稿日 : 2022年4月9日
- 読了日 : 2022年3月28日
- 本棚登録日 : 2022年4月9日
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