著者のフランセス・アッシュクロフト(1952年~)は、英オックスフォード大学生理学部教授で、インシュリンの分泌に関する第一人者である。本書は2002年に邦訳版が刊行され、2008年に文庫化された。
本書は、文字通り、人間は「高さ」、「深さ」、「暑さ」、「寒さ」にどこまで耐えられるのか、人間はどこまで「速く」走れるのか、人間は「宇宙」で生きていけるのかなど、「人間の限界」を科学的に解明しようとしたものである。
私は、本書を、理化学研究所と編集工学研究所(所長は松岡正剛)が共同で2017年に企画・選書した、科学の面白さ、深さ、広さが伝わる“科学道100冊“の中で知り、手に取った。
一部の専門的な説明は著者の了解を得て割愛しているとはいえ、生理学の予備知識のない私には読みにくい部分もあったが、「人間の限界」とは、大まかに言えば、「高さ」と「深さ」については、空気の濃度や圧力の高低に体がどこまで対応できるのか、「暑さ」と「寒さ」については、外気温に対して汗や血液の流れの変化でどこまで体温を調整できるのか、「速さ」については、どこまで速くエネルギーを燃焼させて筋肉の運動に使えるのか、という点にあるとのイメージはつかめたように思う。
そして何より、自分で、ふだん暑さや寒さを感じたり、走ったりしたときに(高い山に登ったり深い海に潜ることは殆どないが)、血管や肺などの身体の中の変化が、朧げにでも想像できるようになったという意味で、とても面白く役立つものであった。
(2018年1月了)
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- 感想投稿日 : 2018年1月13日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2017年8月11日
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