北朝鮮がアメリカと戦争する日 最大級の国難が日本を襲う (幻冬舎新書)

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  • 幻冬舎 (2017年12月14日発売)
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著者の香田洋二氏(1949年~)は、第36代自衛艦隊司令官(海将)を務めた元海上自衛官。海上幕僚長の有力候補であったとも云われる。最近は報道番組にもしばしば登場している。
本書は、2017年半ば以降の雑誌・新聞への掲載文・インタビューを改稿した4つの章に、書下ろしの2章を加えたもの。
近時、北朝鮮情勢を分析・解説した書籍は少なくないが、学者やジャーナリストとは立場を異にする元自衛官として、現実的かつ楽観性を排除した分析を展開している。内容は概ね以下である。
◆北朝鮮が核ミサイル開発をやめ、既に製造した兵器の廃棄を行わない限り、アメリカは軍事力を行使する(核開発の一時的凍結では妥協しない)。既に時限爆弾のスイッチは押されており、現在アメリカは自分たちがいつ何をすべきかを見極めている。
◆アメリカは、北朝鮮の核武装とアメリカ本土に届くICBMの保有を許すつもりは毛頭なく、それをきっかけに、世界中に核兵器が拡散することを絶対に容認しない。そのためには軍事力行使も厭わないのであり、冷静な現状判断からは、「戦争にならない」という結論を導く方がむしろ難しい。
◆アメリカが武力行使をする場合、韓国などの被害を最小限に食い止めるために、奇襲攻撃で北朝鮮の攻撃能力を一気に無力化し、短期間で決着をつけるだろう。Xデーは、火星14型がICBMとして完成する可能性のある来年6月以前で、2月の平昌オリンピックを外した時期、早ければ12月~1月の可能性すらある。
◆戦争となった場合、それは単なるアメリカと北朝鮮の戦争ではなく、世界が制御不能な核兵器拡散の地獄を見る負の連鎖を事前に食い止めるための戦争である以上、日本は、(北朝鮮からの攻撃を防御するだけではなく)、責任ある支援を行い、国際平和に貢献しなければならない。
◆戦争となった場合、北朝鮮は、アメリカからの核兵器での報復を恐れるため、日本を核攻撃する可能性は低い。日本が通常兵器で攻撃されれば、日本のミサイル防衛システムは世界でも最も進んではいるとはいえ、被害はゼロではすまないだろう。
◆アメリカの狙いは北朝鮮の核・ミサイル能力を排除することであり、国家体制の崩壊は目指していないため、38度以北へ攻め込むことはない。その範囲において、この戦争は中国・ロシアともにギリギリ許容できるものであろう。
◆アメリカ・北朝鮮両国が強硬な挑発を控えた結果、アメリカが武力行使をしない可能性もある。その事態は、戦争を望まない関係各国にとって短期的には最良の結果と映るが、いずれは北朝鮮が核兵器と世界のあらゆる地点を攻撃可能なICBMを保有することになり、更に、中東や南米の地域大国が北朝鮮に倣って核・ミサイル保有に驀進し、世界中に核兵器が拡散するという、真の最悪の結果を招くことになる。
北朝鮮が核兵器を放棄し、上記のような事態が避けられることが望ましいのは言うまでもないが、希望的な観測のみに流されることなく、そうならなかった場合の事態を冷静かつ現実に根差して想定する必要があるのは間違いなく、今一読しておく意義のある一冊だろう。
(2017年12月了)

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感想投稿日 : 2017年12月24日
読了日 : -
本棚登録日 : 2017年12月23日

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