ノムさんの本をなにげによく読んでいる。本書は1984年、85年に書かれた本を再編集し、上下巻にした本。タイトル名はノムさんの代表的な言葉だが、もとはどこかの企業経営者がスピーチで使った言葉で、故事にでも由来する言葉らしい。
1983年のプロ野球シーズン中の動きが鮮明に解説されている。それこそ一場面、一投足に至るまでの細かい描写で一瞬の勝負の裏にある駆け引きや技術が語られており、興味深く読める。
野村氏は、感覚や根性、職人芸で成り立ってきたプロ野球の世界をデータ化、というより見える化し、感覚を言葉と数値で表現した初めての人なのかもしれない、と本書を読んで感じた。
興味深いエピソードの数々の中でも特に印象に残った一節。鉄腕・稲尾は長嶋茂雄を封じ込めるためにあれこれと読みに読んで対決してみるが、どの策でも打ち込まれていた。長嶋氏に関しては「深く考えない、感覚で生きている相手にあれこれ考えても仕方ない」という結論に達し、無の心境で勝負するようになってようやく抑え込むことができるようになったという。
ただ「何も考えない」のではなく、鍛練を積み重ねたもの同士が最後に行き着く無の心境が最強なのだろう。そして本書でも、長嶋氏に関してはやはり思うところ多々あり、で意識せざるを得ない野村氏の心境がよく表れていた。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2021年10月12日
- 読了日 : 2021年10月12日
- 本棚登録日 : 2021年10月12日
みんなの感想をみる