読書論や読書術の本が好き。ですが、結局、途中で作品を読みたくなってしまい、読み切る前に置くことになりがちです。
この本は編集者の目線で書かれた読書論と銘打っていますが、3分の2近くは、世界の編集者、出版起業家、図書館などの逸話の紹介で占められています。求めていたものとは少し違うものの、裏方の世界や文献について触れることも少ないので、これはこれで貴重な内容でした。
欧米における編集者=エディターの職業人としての地位の高さを感じさせるエピソード。シニア世代になった作者の友人が、薦められた「ガリヴァー旅行記」を読んで、ジュニア用の縮約版では捨象されていた部分の魅力に気付いたエピソード。これらは前書きに書かれたものですが、特に印象に残りました。
後半3分の1は、ドストエフスキー、トルストイ、メルヴィル、ゾラ、バルザックといった錚々たる文豪たちの作品紹介。代表作とは違う味わいの親しみやすいものとその特徴的な一節が紹介され、挑戦意欲をかきたててくれます。
あとは、児童文学。ロビンソン・クルーソー、宝島といった定番をはじめ、傑作中の傑作とされるフィリパ・ピアス「トムは真夜中の庭で」の紹介はこれを読まないと勿体ないと思わせられます。
多読を諌める読書論もありますが、そもそも自分は読むべき作品を読んですらいないと、こうした読書論を読む度に痛感します。各章の紹介文献リストを再読する機会が訪れることを祈りつつ、また読書論を渡り歩いているような気がします。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年6月26日
- 読了日 : 2023年6月26日
- 本棚登録日 : 2023年6月26日
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