ジェームズ・ラブロックのガイア理論をSFに仕立て上げたストーリー。変容する地球環境における生物の競争と共生、連鎖の頂点に立つ人類の存在意義、多数が構成する全としての高次元意識など、深淵にして危急なテーマがどっさり語られる。
執筆された1990年から2038年を予測した近未来SFだが、2021年現在、順当に進んでいてかなりゾッとする。本作の世界では、人口が100億を超え、人々は発達したコンピューターネットワークに依存し、気温の上昇により保護装備なしでは日中外に出られない、などなど、もうほとんど今の現実である。
本作でカギとして描かれるのが<ネット>、つまり現在でいうインターネットのような電子空間と、人間の<意識>を構成する「多数」と「陰と陽」の謎。そこからつながっていくオチは、まさにSFの興奮で楽観的なものだが、現実の私たちにとっては考えるべき課題をたんまり突きつけてくれるものでもある。
小説としての欠点もあるが、色々と……思索を誘引するすごい作品だった。
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- 感想投稿日 : 2021年10月30日
- 読了日 : 2021年10月30日
- 本棚登録日 : 2021年8月12日
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