市場社会の思想史: 自由をどう解釈するか (中公新書 1465)

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  • 中央公論新社 (1999年3月1日発売)
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こと「経済」というと否が応でも意識される「市場」をどう捉えるか、そして「市場」において「自由」がどう扱われているかを、歴史上出てくる各学派や代表的な人ごとにその思想をまとめた書。

簡単に言うとスミス以来、市場の自由化→制限→自由→制限、と絶え間なく市場の自由度において異なる意見が出てきているように感じた。
少し乱暴だがまとめてみると、概略以下の感じかと。

重商主義(ただ強者の論理。強者(イギリス)側の自由)
→スミスの自由主義(ただし社会道徳、正義の法によるルール制限は有)
→ドイツ歴史学派(制限。F・リスト)
→古典派(制限付き自由。一部社会主義寄り意見有り。D・リカード、J・S・ミル、…)
→社会主義(制限。サンシモン、マルクス、…)
→限界効用学派(自由。ジェヴォンズ、メンガー、ワルラス)
→S・ヴェブレンの制度主義(ちょっと異端。制限。貨幣、金融重視を批判)
→K・ポラニーの「大転換」(制限。自由はありつつも計画経済志向)
→ケインズの積極政府(制限付き自由。有効需要創出の公共事業をバンバン)
→マネタリスト(自由。小さな政府。M・フリードマンら)

ここでもやはり①ホッブズ・ロック的自由か②ルソー的自由かなど、前提として論者が求めている自由観によって、それを実現する交換調整機構としての「市場」のあり方も変わってくる、というもの。なお上記は時代の前後があったり、単線的でなく複合的に同時代を進んでいたりもしてます。
経済学かじってましたけど、大変まとまりました。勉強になりました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2015年9月30日
読了日 : 2015年9月30日
本棚登録日 : 2015年9月30日

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