アゴールニンズ

  • 早川書房 (2005年6月9日発売)
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本棚登録 : 45
感想 : 7
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体長70フィート、両翼と炎を吐く力を備えた名士、500歳近いボン・アゴールニン啖爵(だんしゃく)臨終の場面から物語は始まる。これがね、そのボン・アゴールニンの遺骸の相続を巡って親戚間紛争が勃発するのですね。デヴラク士爵は強欲、人間だけじゃありませんね、遺言に背いて自分の家族で大きく食べちゃうんだな。いやどうも、これが児童書であるはずがないじゃありませんか。育ちの悪い小竜(こども)なんかも食べられちゃうんですよ。
「共食いは竜の性だ」、人間征服以前は「若いドラゴンは翼が育ちきると冒険の旅にでかけるならわしだった」、「こんなふうに寝そべると、黄金の味がお肌においしいと思わない?」なんてところは、ドラゴンらしい。でもね、都の都市計画美観局勤務のエイヴァン・アゴールニンは出世競争中(競争相手を食っちまうこともあるようだが)。ひと腹の卵同士の姉妹ヘイナーとセレンドラは涙もろい。お年頃の愛らしい娘なんて言われても、翼はあるし、うろこもあるし、どう考えたらいいのだろう。極めつけは牧師もいるんだな。ペン・アゴールニン。それだけならいいが、乙女たちの一竜(ひとり)を嫁にともくろむ、いやらしそうなフレルト牧師もご登場。
全竜(みんな)結構欲深で、弁護士稼業も繁盛してる。確かUrsula K. Le Guinの「ゲド戦記」では「人間はくびきを選び 竜は翼を選んだ 人間は所有することを選び 竜は所有しないことを選んだ」はずなのに。でもまァ、いいことにしよう。息子に「だれか感じのいい嫁をわが手で選ぶこと」を夢見る母親ドラゴンとか、乙女の変色とか、『召使の隷属について』なんて著書も出てくるが、何と言っても最後は「めでたし、めでたし」なんですね。何でもありのお話に、付録「ドラゴン暦について」も付いている。お買い得。目をくるくる回して読んでみましょう(笑)。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: Fantasy
感想投稿日 : 2005年7月23日
読了日 : 2005年7月23日
本棚登録日 : 2005年7月23日

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