持続可能な資本主義――100年後も生き残る会社の「八方よし」の経営哲学 (ディスカヴァー携書)

著者 :
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン (2019年1月25日発売)
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感想 : 30
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著者の鎌倉投信さんへの投資は僕ももう長いことやってます。
利益追求ではなく社会に役立つ企業の応援をされてる方です。
鎌倉投信は「リターン=お金」というの定義を書き換えることで、現在のフロー重視の資本主義にかわる、新しいシステムをつくろうとしています。
リターンをお金と捉えてしまうと効率的な投資を追求することになり無限にお金を稼がなくてはいけなくなります。
ゴール設定を変えていい会社を支援する必要があります。

「いい会社」は数値化できない
もし指標をつくって画一化しようとすれば、企業は指標を満たそうとするあまり個性を失い、社会から多様性が失われてしまう。
「いい会社」のすべてを定量化することはできない、いや、むしろすべきではないと書かれています。
たしかに定量化数値化してしまうと目的と手段が入れ替わっていい会社に見せかけることが目的になってしまいます。

「お金をリターンとすると「三方よし」は成立しない」
本書はお金をリターンにする今の行きすぎた日本の資本主義経済を憂いています。
日本では昔から定量化数値化できない「信頼」を拠り所にしてきました。
取引先や社会から「信頼」を得なければ企業は長期的に発展することはできません。
今の日本の金融業界はリスクを軽減するために「BIS規制」の基準を取り入れたのかもしれませんが結果として生まれたのは銀行の「目利き」能力の低下だったと書かれています。。
「信頼」の元になる社会的価値や人間的価値などの「見えざる資産」を評価する力を失い客観的に評価できる担保に極度に依存する体質をつくってしまったことが今の日本の行き詰まり感を表しているんやと思います。

「CSV」
とは「企業が事業活動を通して経済性(利益の創出)と社会性(社会課題の解決)を両立すること」と書かれています。
噛み砕いていえば「ボランティアではなく本業で社会に貢献すること」です。
そして企業が「CSV」の姿勢を持っているかはステークホルダーとの間に「共通価値」を見いだしているかどうかが重要な判断基準となると書かれています。
こちらもシンプルに「自分と相手のどちらにとっても価値があると感じられるもの」と言い換えてよいと書かれています。
お金をリターンとすると一見利益相反すると思われることも「共通価値」という一段高い視点で抽象化することで経済性と社会性を両立することが可能になるんやと思います。
日本では「三方よし」の概念をみればわかるように社会性がすでに事業のうちに内在していたと書かれています。
SDGsを上げるまでもなくこれからは日本的経営が見直されるのかもしれません。

「ファン経済」
価格選好から脱け出すための立派な競争戦略と書かれています。
価格コムを上げるまでもなくみんな安いものが好きです。
でもそれが行きすぎた結果「安いが正義」になってしまいました。
そこに売り手と買い手のつながりはありません。
ファン経済は価格競争だけの世界から選ばれる企業を目指すための競争戦略と書かれています。
企業のステークホルダーにファンになってもらうためにもっとも重要なものは「事業に対する大義」すなわち「経営理念」と書かれています。
経営理念に共感してもらうことからファンづくりの第一歩がはじまります。

「無料コンサルティング」
自社製品を使ってもらう代わりにコンサルティングを無料でする会社があります。
利益は取引先の成長の延長線上にあるという考え方です。
利益を取引先と奪い合うのではなくともに成長し長期的な関係性のなかで双方の利益を増やしています。
この考えは役所にも通じると思います。
これまで民間に肩入れすることはタブー視されてきました。
しかしこれからは民間さんが儲けることで税金も増えるし雇用も増えると考えるべきです。
特に福祉的雇用をしてもらうためにはまず足元の経営をしっかりしてもらう必要があります。
そのために共存共栄なんやと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年3月17日
読了日 : 2022年3月17日
本棚登録日 : 2022年3月15日

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