定番すぎる文学作品をだいたい10ページの漫画で読む。 (torch comics)

  • リイド社 (2016年7月25日発売)
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本棚登録 : 640
感想 : 34
5

単純な企画もの(てっとり早く名作のストーリーを知りたい)というようなものなのだろうと、そんなに期待していなかったのだが、きちんとした漫画作品だった。

初めてページをめくった時は、咄嗟に「本、間違えた?」と思ったくらい、水木しげるそっくりの絵の漫画。水木しげるは昭和史とかヒットラーとか割と大人向けのモノも書いているから、もしかしてこういうのも書いていて、そのアンソロジーなのかと、目を疑った。

作者のドリヤス工場という人を知らなかったことが原因なのですが、水木さん風の絵で、同人誌を書いている方とのこと。

ですが、偽物感は全くない。ドリヤスさんは、水木しげるの絵を自分のものにしており、無理な感じが全くしない。なので、水木漫画を読んでいるような奥深さを感じてしまう。

過去の名作小説をあえて10ページ程度で表現するというのは、漫画というフォーマットにあっていると思う。(手塚治虫の「罪と罰」とか)オリジナルの、物語、フレーズを取捨選択しながら、小説を漫画でカバーしているのだが、原作が力があることと、ドリヤスさんの編集力、職人芸が凄いのとで、どの作品も、元の作者の雰囲気の出た、「らしい」仕上がりになっている。
※この小説カバーも3冊もシリーズ化しているんですね。

やはり、キャラクターがどれだけ立っているかということなのだろうか、短いページ数でもはっきりと登場人物たちの個性がだしきれている作品たちが、面白い。
夫婦善哉、地獄変、桜の薗、斜陽、銀河鉄道の夜、あらすじであっても、その作品の持っている求心力を否応なしに感じる。
そしてそれに寄り添うのに、これだけ水木絵が適しているとは。

ドリヤスさんの漫画力がとにかくこの本をきちんと作品として成り立たせているのだろう。

魏志倭人伝とかまで表現していて、日本の歴史、世界の歴史とかの漫画版もぜひドリヤス先生で作ってほしい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年3月12日
読了日 : 2018年3月12日
本棚登録日 : 2018年2月24日

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