まともに感想をかけない。すごい映画。
登場人物たちは、やるせなさ、不安定さ、弱さの中、
人を信じたい、関係を成り立たせたいと願う。
暗闇の中の弱々しい一筋の光のような希望。
人間の、非人間的な部分と人間的な部分の混濁に対し、おびえながら、人を信じようとし、信じきれない登場人物たちのヒリヒリ感。
是枝監督のいつも通りの「家族」がテーマ。
偽りの家族が、「家族」とは何かというテーマをより鮮明に浮かび上がらす。
是枝監督の演出と、出演者達の鬼気迫る演技が、物語に生命を与え、力強い作品となった。
ある意味ベタな状況設定だし、それぞれの人物のキャラクター設定もベタベタで、少しでも演出の気を抜くと、絵空事になり、作品をダメにしてしまう。
物語の構成も伏線が回収されたり、言葉の意味が後で分かったり、割と緻密に計算されている。
ここは、図式的、形式的、説明的になり、頭でっかちになることもリスク。
犯罪、罪、の概念がもう一つのテーマとしてあることが重要なのだと思う。
登場人物たちはみな、罪をおかしている、小市民的な子悪党。
世の中のルールに沿っていると生きられない人間たち。
そもそも世の中の常識って何?
彼らにとっては正しいことではないし、正しい正しくないは置いておいて、沿える事ではない。
愛だって、良いことばかりではない、使い方を間違うと憎しみにも化けるし、愛は、とてつもなく暴力的に害になる。
家族愛だって結構やっかいだ。
親の愛って、子どもにとっては暴力でしかなかったり。
だからこそ、他人が気持ちだけで「家族する」ということが成り立たないのは、ほとんど当たり前。
そこが奇跡的に成り立っているように見えた。
長年、社会との違和感を、犯罪でずらし生きてきている大人達と、きちんと倫理観のある子どもで、ズレが生じてくるところが、この映画の肝だと思う。
子どもである祥太は、罪と罰におけるソーニャのような神聖な存在に見える。
観ていて、幸せであるはずの前半もかなり息苦しかった。
是枝さんが、登場人物たちを信じきれないと思わせる演出を、しているのだと思う。これが凄いことだ
物語が展開する上でこの演出が生きてくる。
見終った感覚としては、ブレッソンの「ラルジャン」の感覚に似ていた。
また、ダルデンヌ兄弟「ある子ども」も見返したくなった。
- 感想投稿日 : 2019年9月1日
- 読了日 : 2019年9月1日
- 本棚登録日 : 2019年9月1日
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