不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)

  • 講談社 (2008年1月18日発売)
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本棚登録 : 2099
感想 : 277
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この本を読んでGoogleが「昔の日本企業のようだ」なんて書いてあるからって、浮かれて社員旅行を企画したりする前に、少し立ち止まって考えてほしい。高度成長期の日本企業がおかれていた環境は、まさに現代の成長産業であるIT分野の状況と酷似していたのではないか?
この本にある3つの具体例のうち、実に2つがIT分野の新興企業である。
成長期にある企業の姿は「熱意の好循環」とも言うべき状況においてどれも似通った形になるのは想像に難くない。
問題は、パイ自体が縮小する状況下で、社内以上に殺伐とした外部環境に取り囲まれながら、既に巨大化してしまった組織のモチベーションをどのように維持し、互いに協力し合うことが可能か、という点である。本書の答えは、小は朝の挨拶や「ありがとう」の気持ちを心を込めて伝えることであり、大はインセンティブや役割構造に対する工夫である。どれももっともな話が書かれてはいる。今まさに深刻な状況にある職場には有意義な情報だろう。
が、一読した後もモヤモヤが晴れない。申し訳ないのだが、ここに出てくる職場や社員の「いきいき」「はつらつ」の、ある種の宗教くささやチャラチャラした青臭さが生理的に駄目なのだ。特に入社式で親からの手紙を読む、なんていうお涙頂戴は自分の職場だったらと想像しただけでぞっとした。
会社は心洗われるために行く場所ではない。
この本に決定的に欠けているものがあるとすれば、「ありがとう」「すごいよ」という上っ面の言葉だけではない、背中に語らせる、背中を見て育つ、という感性だ。時代遅れの謗りを覚悟で、この感性だけは絶対に伝えるべきと信ずるものである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年12月23日
読了日 : 2008年3月13日
本棚登録日 : 2013年12月23日

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