ベラスケスの十字の謎

  • 徳間書店 (2006年5月31日発売)
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感想 : 29
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元来好きなベラスケス・・スペインではぴかいちと思っていたし、本物は手が届かないから「グレートアーティスト」のばら売りで購入していた。
「ラス・メニーナス」の解説で彼が「技術的に、人間の本質をとらえる才能に長けていた」とあった。
宮廷における地位を考慮しつつも、外面的な見せかけをこえ、内に秘められた人間の神秘を見通していると。
宮廷の憐れな道化師たちは神々しい生気を帯びている。
ベラスケスにとり、モデルとなった道化師たちは例外なく魂を持っており、神の目の元に平等であるからこそ、ベラスケスにとって等しく尊敬に値していたと。

児童書とあるが13歳を越えたあたりでないと理解できないのではと思う・・それだけ人の魂に訴えかける様な叙述が為されており、余りの面白さで、2時間ほどで読み切った。

美術本紹介と言えばあの女性が有名だけど、こういった現地・セヴィリアの方が書いた「スペインの国情・歴史宗教観などを肌で感じて育ってきた」作品はかなり異なったニュアンス。

「群像をこうした大画面に描ききること・・・それには並外れた才能が必要とされる」と述べたのは、ケネス・クラーク

作品を読みながら、かの名画を何度も何度もながめ返して眺め余情に浸った。
作者の手腕は「アートサスペンスファンタジー」とでもいうのだろうか・・・ベラスケス亡きあとに描き加えられた騎士団の赤い勲章‥そこから敷衍されて広がるベラスケスの想い、それを受けとめたと設定されるニコラス、そのキャラ設定とバックで支えたマスティフ犬・マレバリボラとバレハ等・・対する闇の人物(絵画でもそう描かれたネルバルの描きに引き込まれた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年6月6日
読了日 : 2022年6月6日
本棚登録日 : 2022年6月6日

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