「[児童文学』というものは『子どもに夢を希望を与えるもの』だとしたら、どうも、『モモちゃんとアカネちゃん』はちがうものなのかもしれない。もっとなんというか、リアルなことが、この作品には書かれている。」ー高橋源一郎氏の本書解説より
作者である松谷さんの実体験…ほんとうにあったことを元にしつつ、ファンタジックな要素もある、苦さも優しさもある、そんなおはなしたち。
欠かせない隠し味は、モモちゃんとアカネちゃんにみんなが注ぐ視線に「愛情」がこもっていること。
黒ネコのプーはモモちゃんが生まれた時におうちにやってきて、モモちゃんやアカネちゃんだけでなくおかあさんともおはなしができる(子どもだけが動物と話せる物語はよく見かけるけど、大人も動物と会話できる物語は新鮮だった)。
アカネちゃんが生まれる前からおかあさんが編んだアカネちゃんのための双子の靴下・タッタちゃんとタアタちゃんは、アカネちゃんとだけおはなしができる。
タッタちゃんとタアタちゃんがアカネちゃんのために奔走する姿は微笑ましい。
他にもおかあさんが忙しい時においしい料理を作ったりして助けてくれる森のくまさん。
森の動物さんたち。
やさしいファンタジーがここにある。
でも、おとうさんとおかあさんは「もっか けんかちゅう」になった末におわかれをすることになる。
最初はおとうさんが帰ってくるのを待っていたおかあさん。でも足音がしてドアを開けると、そこにいるのはおとうさんの靴だけ。
そんな現実のシビアさもファンタジーの中に伝えられている。
児童文学なのにたまにドキッとするシビアさがところどころ現れる。
でもシビアさもちょっぴりは必要なのかもしれない。
子どもだって、現実はしあわせだけじゃないって、わかってると思うんです。
その中で愛情に包まれて、笑って生きていく。
たくさんの人(動物さんたちにも)に助けられながら。
あとは、おかあさんの子どもたちへの思いの通じなさ、子どもたちからおかあさんへの思いの通じなさの描き方がリアルだなと思いました。
たくさんたくさんあるお話のうちで、私が一番好きなのは、ーちいさいアカネちゃんーの中の「野原で」というおはなし。
いたいのいたいの飛んでけっておかあさんがアカネちゃんにやったら、お山に飛ばしたらお山にいるおじいちゃんのおひざがもっといたくなっちゃうようと泣き出すアカネちゃん。
困ったお母さんはラクラク山のうさぎさんにお電話をして、そちらへ飛んでいったいたいいたいはどうなっておりますかと聞きました。
そのうさぎさんの答えがとても素敵なのです。
いつも短編集は備忘録がてら目次を載せるのですが、あまりにも数が多いので今回は割愛。
- 感想投稿日 : 2022年9月28日
- 読了日 : 2022年9月27日
- 本棚登録日 : 2022年9月27日
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