ワンダー Wonder

  • ほるぷ出版 (2015年7月18日発売)
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感想 : 348
5

とても面白くて、約400ページを一気に読み切ってしまった。そして感動した。
本当に感動した。主人公のオーガストを中心に、様々な登場人物の視点から、リレーのように話が展開される。
それまで学校に通わず自宅で学習していたオーガストが、中等部入学を機に学校に通う決心をし、通い始めるところから奇跡は始まる。一時は親友の裏切りに、学校になんかもう行かないと思い詰めることもあったが、負けじとオーガストは学校に通い続けることを決める。ここで学校を通うことをやめていたら、中盤以降の奇跡と感動はなかっただろう。
中盤あたりまでは、自分がオーガストの立場だったら、その家族だったら、クラスメイトだったら…とドキドキモヤモヤしながら読んでいた。オーガストの歪んだ顔立ちを初めて見た人の態度を、オーガストが機敏に感じ取り、気にしない素振りをしながらも傷ついていることがよくわかったからだ。オーガストの姉ヴィアが、オーガストが家族であることでいろいろなことを我慢してきたことがわかったからだ。自分がその立場だったら、わだかまる葛藤に自ら答えを出せただろうか。
けれどオーガストは、葛藤に翻弄されながらも日々を乗り越え成長していく。そしてその周りの人たちも。
かつてオーガストによそよそしかったクラスメイトたちは、オーガストの仲間になったのだ。
五年生の終わりに学校で賞を受賞し、みんなから拍手喝采を浴びたオーガストは、
「だれかを見かけて、もし自分がその人だったらどうかなんて、ぜんぜん想像がつかないってこと、あるよね。車椅子の人や、話せない人を見たときとか。そして、ぼくがほかの人にとってそういう存在なんだってことくらいわかってる。ーぼくにとって、ぼくはただのぼく。ふつうの子ども。ーただ五年生無事に終えただけなんだけど、それって、かんたんなことじゃないんだよね。べつにぼくじゃなくても」
と思うのだ。
ここじんわり涙が出た。感動で。ここに全てが集約されている気がした。
ただのぼく。オーガストが自分をはっきり肯定した瞬間だと思う。
なんだか上手くまとめられていないけど、とても感動したということで。オーガスト中心に感想を書いたけど、他の登場人物も素晴らしい。巻末のみんなの格言を読後に読むのがとてもいい。
個人的には、ジュリアンの格言に何か意味深なものを感じる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 児童文学/絵本
感想投稿日 : 2021年7月13日
読了日 : 2021年7月13日
本棚登録日 : 2021年6月29日

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