伊庭八郎ってどれくらいの知名度なのか分からないけど自分も数年前に知った人で幕末の幕臣で最後は新撰組の土方歳三と同じく五稜郭で戦死した人らしい。その彼が亡くなる五年前に時の将軍家茂の上洛に伴って講武所師範の父と共に警護役として京都に滞在していた時の日記について書かれた作品。家が剣術道場で自身も小天狗と称されるほど剣の才能があった八郎。征西日記と命名された日記はさぞや厳しいものであろうと思って読むと見事に肩透かしを食らう感じの呑気なもの。グルメ日記は大袈裟だけど、鰻屋に行っただのお汁粉食べただの友達と天ぷら揚げて食っただのといった記述のオンパレード。面白いのは現代人と同じく非番の度に金閣寺だ伏見稲荷だ清水寺だとしっかり観光しているところ。仕事と言っても要は時代劇でよくある「であえい!であえい!」と呼ばれた時に刀抜いてぞろぞろ出てくるあれだと思うのでたぶん座敷で刀持って座ってるだけと思われ、観光してない時はせっせと道場に通ったりしてはいるのだけど基本的には美味そうなもの食べたり本買ったりする至って呑気な日常で微笑ましい。ただ、歴史を知ってる者からするとこれからたったの五年後にこの呑気で陽気な若者が片腕を切り落とされるほどの重傷を負いながらも新政府軍と最後まで戦い抜いた挙句戦死するのだと思うとなんともいえない気持ちになる。間違ってもグルメ本だと思ってはいけない、その意味ではタイトルが不適切過ぎる、そんな印象。
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- 感想投稿日 : 2021年5月24日
- 本棚登録日 : 2021年3月28日
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