朝日新聞の記者である三浦英之氏が、かつて満州の最高学府として実在した建国大学と、その卒業生たちの戦後を取材した作品。
建国大学は1938年に石原莞爾らの起案により、満州国のリーダー育成を目的として設立される。五族協和のスローガンのもと、アジア各国から優秀な生徒が学費免除で集められ、学内では当時としては珍しく言論の自由が許されており、社会主義の研究なども行われていたそうだ。
この建国大学の存在があまり知られてこなかった理由としては、終戦と同時に学校に関する資料がほとんど焼却されてしまった事、そして卒業生の多くが、日本帝国主義の協力者として母国から迫害を受けた事が大きい。三浦氏が取材で中国を訪れた際にも、実際に当局から妨害を受けており、いまだに特定の話題はタブー視されているらしい。
本作の取材を開始した時点で、卒業生はみな80代半ばを過ぎており、このタイミングがまさに最後のチャンスだったのだと思う。戦場や収容所で絶望しそうになった時、大学で学んだ教養が悲しみの淵から救い出し、目の前の道を示してくれた、という卒業生の言葉がとても印象的だった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史
- 感想投稿日 : 2018年3月19日
- 読了日 : 2018年3月19日
- 本棚登録日 : 2017年12月19日
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