白檀の刑 (上) (中公文庫 モ 9-1)

著者 :
  • 中央公論新社 (2010年9月22日発売)
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感想 : 22
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初めて読んだ莫言。地方劇を題材としてるから始まりの各章、主要人物がそれぞれの口調で語る口語調で描かれているのか。まるで京劇の舞台のようにそれぞれの角色が舞台に出てきて歌ったり見栄を切ってる姿が浮かんできて凄く懐かしい気持ちになった。文章中使われてる言葉が割と荒っぽいというか直で汚くて、大学の教授が中国文学は半端なく罵語が豊富!って言ってたのを思い出した。罵語にしろ典故にしろ韻文にしろ翻訳めちゃ大変そう。原文はどういう言葉で書かれているんだろう。特に擬音どうなってるんだろう。処刑の描写が想像以上に生々しくえげつなくて、でも凄く惹きつけられて読む手を止められなかった。中国の処刑がやばいという話は色々と聞き及ぶ所だし、そもそも老仏爺からして物凄くエグい事してるんだから何をか言わんやって感じではあるけれど。そこに処刑人がいて、上からまるでお品書きのように発注された刑を職人の如く遂行していることには、この本を読むまでは思い至らなかった。その分、余計に処刑という行為が血肉を持ったというか。ぐぅっと来るものがあった。中国近代文学や元代の戯曲ばかりで列強に蹂躙された後の中国文学をちゃんと読んだことが無かったけどなるほど…と思った。あとがきで吉田氏が書かれている「莫言はこの小説で、人間の修羅を見つめていると言えましょう。」という言葉には凄く得心がいった。とりあえずそんな感じ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年9月16日
読了日 : 2021年9月16日
本棚登録日 : 2021年9月16日

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