フラナリー・オコナー全短篇〈上〉 (ちくま文庫)

  • 筑摩書房 (2009年3月10日発売)
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感想 : 22
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雑誌『MONKEY vol29』フラナリー・オコナーの描いた漫画が掲載されています。上手ではないですが強烈なメッセージが伝わってくる力強いペンタッチが特徴です。フラナリー・オコナーの冷静な視線は学生時代から変わっていないというのがわかります。

ラジオ番組でフラナリー・オコナーを紹介していたのを聞いて興味を持ったタイミングでこの漫画を読みました。これもなにかの縁だとおもって図書館で借りてきました。

全体の感想としては恐ろしい小説集だということです。その恐ろしさはオコナーの「おまえさんわかったつもりになってないかい」という声が聞こえてくるような感じがするところです。人種差別や暴力にたいしての我々の感情。簡単にそれが良くないことだと感じるのですが、私の中にも差別や暴力に対する快感のようなものが眠っていないかと問いかけてくるところが恐ろしいのです。

例えば『田舎の善人』。ミセス・ホープウェルと使用人のミセス・フリーマンは娘ジョイの片足が無いこと、これまでの人生で楽しいことがなにも無かったことを憐れんでいる。一方ジョイは大学で哲学を学び周りの人間が学がないことをバカにして、そこだけを拠り所に生きている。そして自分のことを賢いとおもっているジョイがふらりと立ち寄った聖書売りの男に簡単に騙されてしまいます、その男の目的は人間を辱めることなのです。登場人物がすべて他人の悪いところのみみて生きているところがものすごく怖くなってきます。生きていく糧が他人を下にみるところは現在にも通じるところがあると思います。

人間の恐ろしいところ、いやなところのオンパレードの小説集なのになぜか引き込まれていきます。そこがフランクリー・オコナーの小説のすごいところです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年5月6日
読了日 : 2023年5月6日
本棚登録日 : 2023年3月26日

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