白い土地 ルポ 福島「帰還困難区域」とその周辺 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2023年10月20日発売)
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本棚登録 : 51
感想 : 8
4

 かなさんのレビュー(1年前の3.11)で、読まなきゃなーと思いながら1年経過経。三浦英之さんのルポはいずれも良質(読了3冊でそれ言う?笑)で、本書は昨秋に文庫化。読むなら今でしょ!と手にしました。
 話は逸れますが、『南三陸日記』を皆さんぜひぜひ一読を! もう涙がちょちょぎれます! バスタオルものです!(偶然にも本日、チーニャさんが熱く語ってますね)

 さて本作は、福島第1原発事故による避難指示区域とその周辺のルポです。《白地》とは、「帰還困難区域」の中で未だ居住が望めないエリア。国の除染で避難指示解除はわずか8%(2023現在)とのこと。
 三浦さんは、そこに住む人の本音を聴き、感じ、伝えるために、現地に通い、移住し、新聞配達を手伝うのでした。

 多くの方々と発災からその後が取り上げられています。避難先から被災地へ娘を探しに通う男性、高校馬術部の生徒たち、かつて甲子園でアトム打線と呼ばれ、今マスターズ甲子園を目指すOBたち、避難指示解除の街でたった一人で新聞配達をする青年、町民の辛苦を一身に背負って"闘う町長"、台風によるフレコンバッグ流出事故、葬られた復興五輪等々。

 とりわけ、全町避難を強いられた浪江町長の、政治生命を賭けて取り組んだ「賠償問題」と「記憶の継承」は余りにも重く、その無念を想うと心が張り裂けそうです。
 「福島の復興なくして日本の再生なし」と言い張った当時の政治家の言葉が、なぜここまで虚しく響くのか‥。真に被災者に寄り添うとはどういうことか、これほど考えさせられるルポもなかなかないような気がしました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年3月8日
読了日 : 2024年3月8日
本棚登録日 : 2024年3月8日

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コメント 4件

かなさんのコメント
2024/03/08

本とコさん、こんにちは!
この作品を読んでくださって嬉しいです。
三浦英之さんの作品は良質に同意します!
(私もまだ読了数は少ないけれど(^-^;)。
そして、「南三陸日記」は
多くの読書家さんに手にしてほしい作品ですよね!

いつか、この文庫本も書店で眺めてみようと思っていたんですが、
このオレンジ色なのは、柿なんですね…。
もしかして原発の関係で
廃棄しなくてはならなくなったものなんでしょうか?
この作品も本当に深い、色んな事を考えさせられる内容でした。

NO Book & Coffee NO LIFEさんのコメント
2024/03/08

かなさん、コメントありがとうございます♪
表紙の写真、柿ですね‥。本文中では触れられて
いませんが、タイトルでもある白とオレンジの
鮮やかさが逆に悲しいです‥。
今年は能登半島地震もあったので、例年以上に
気が滅入ります。
あー暗いですね、元気出していきましょうᕦ(ò_óˇ)ᕤ

NO Book & Coffee NO LIFEさんのコメント
2024/03/08

 ちょこっと調べると、「あんぽ柿」(干し柿の一種)の元になる柿の廃棄写真のようです。
 なんでも、生の柿でOKでも、乾燥して水分が飛ぶと、放射性セシウム濃度が上がるとか‥。
 出荷製品は全品検査済みだそうですが、柿の乾燥果実等は加工自粛が今もあるそうで‥。切ないです(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

かなさんのコメント
2024/03/11

本とコさん、こんにちは!
調べてくださってありがとうございます。
「あんぽ柿」…おいしいのに、こんなにたくさん…
柿の加工自粛、今もあるなんて…居たたまれないですね。
震災の発災から13年、
まだまだ沢山解決しなければならないこと、ありますね…。

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