雪舟えまさんの歌集の文庫本ですね。
雪舟えま『ゆきふね・えま』さん(1974ー)札幌生まれ。小説家・歌人。
歌集『たんぽるぽる』の初版は2011年の春だそうです。この文庫版(新書サイズ)は2022年の2月発行です。短歌なのでこの新書サイズが良いですね。
とは言え、短歌を少し味わってみようという私の目論みは、ページを開いた瞬間に「えっ」となりました。こんな短歌あり、雪舟えまさんの世界の中に引き込まれる短歌ですね。
目がさめるだけでうれしい 人間がつくったものでは空港がすき
とても私。きましたここへ。とてもここへ。白い帽子を胸にふせ立つ
美容師の指からこの星にない海の香気が舞い降りてくる
きみ眠るそのめずらしさに泣きそうな普通に鳥が鳴く朝のこと
カステラの一本ずつに雷をしずめて通りすぎるあまぐも
妖精の柩に今年はじめての霜が降りた、 という名のケーキ
北風はほんとうに来てこの窓へ電車の音を運んでみせた
雪よ わたしがすることは運命がわたしにするのかもしれぬこと
風呂あがりあなたがパジャマ着るまでの時間がのびる春なのです
たんぽぽがたんぽるぽるになったよう姓が変わったあとの世界は
はやく何か建てばいいって言われてる空き地を月が歩いているよ
手のなかで軋むデラウェアあの人の深層筋を吹きわたる風
解説の松川洋子さんは「若草色のシュールレアリスム」と言われています。
私には、短歌のメルヘンに思えます。よくわかりませんが、穂村弘さんが認めていらしゃるから確かなのでしょう。
文庫版には、詩が一篇『地球の恋人たちの朝食(抄)』も記載されています。
ちょっと驚いて、楽しめる歌集でした。
- 感想投稿日 : 2024年3月18日
- 読了日 : 2024年3月18日
- 本棚登録日 : 2024年3月18日
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