たんぽるぽる (短歌研究文庫)

著者 :
  • 短歌研究社 (2022年2月21日発売)
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本棚登録 : 284
感想 : 14
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雪舟えまさんの歌集の文庫本ですね。
雪舟えま『ゆきふね・えま』さん(1974ー)札幌生まれ。小説家・歌人。
歌集『たんぽるぽる』の初版は2011年の春だそうです。この文庫版(新書サイズ)は2022年の2月発行です。短歌なのでこの新書サイズが良いですね。
とは言え、短歌を少し味わってみようという私の目論みは、ページを開いた瞬間に「えっ」となりました。こんな短歌あり、雪舟えまさんの世界の中に引き込まれる短歌ですね。

目がさめるだけでうれしい 人間がつくったものでは空港がすき

とても私。きましたここへ。とてもここへ。白い帽子を胸にふせ立つ

美容師の指からこの星にない海の香気が舞い降りてくる

きみ眠るそのめずらしさに泣きそうな普通に鳥が鳴く朝のこと

カステラの一本ずつに雷をしずめて通りすぎるあまぐも

妖精の柩に今年はじめての霜が降りた、 という名のケーキ

北風はほんとうに来てこの窓へ電車の音を運んでみせた

雪よ わたしがすることは運命がわたしにするのかもしれぬこと

風呂あがりあなたがパジャマ着るまでの時間がのびる春なのです

たんぽぽがたんぽるぽるになったよう姓が変わったあとの世界は

はやく何か建てばいいって言われてる空き地を月が歩いているよ

手のなかで軋むデラウェアあの人の深層筋を吹きわたる風

解説の松川洋子さんは「若草色のシュールレアリスム」と言われています。
私には、短歌のメルヘンに思えます。よくわかりませんが、穂村弘さんが認めていらしゃるから確かなのでしょう。
文庫版には、詩が一篇『地球の恋人たちの朝食(抄)』も記載されています。
ちょっと驚いて、楽しめる歌集でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歌集
感想投稿日 : 2024年3月18日
読了日 : 2024年3月18日
本棚登録日 : 2024年3月18日

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