カエルの声はなぜ青いのか? 共感覚が教えてくれること

  • 青土社 (2011年12月22日発売)
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感想 : 13
3

P7
本書は、過去7年間にわたる研究の成果だ。共感覚についての最終結論とまではもちろんいかないが、本書では、現時点での研究状況を、できるだけ広範に吟味しておいた。

P8
第1章では共感覚の研究史に焦点を当てる。驚くべきことに、共感覚の研究史については、あまり知られておらず、研究に精力的に取り組んでいる専門家ですら誤解していることもしばしばだ。この章ではまた、(盲人の場合のように)実際に対象がない場合ですら、脳が視覚体験を生み出すしくみについて簡単に考察する。
第2章では、本書の副題にもなっている「諸感覚の混交」を取り上げたい。このアプローチは、五感などの諸感覚が厳密に分かたれているという発想に真っ向から挑むものだ。
続く第3章では、相反する前二章の糸を一つに紡ぎ合わせることで、共感覚についての一般理論と、共感覚と多感覚性知覚との関連性について概観する。
第4章では、多彩な内的「地図」を頼りにして、脳がどのように空間感覚を生み出しているのかという点と、空間が、知覚はもちろん、思考や記憶に関して重要な役割を果たしているのかという点について考えてみたい。
そして最終章では、諸感覚を超えて共感覚が担うことになりうる役割に触れることにする。共感覚とは果たして、創造性、言語そして記憶とどれほど密接にかかわっているのだろうか?
本書で披露した発想は、様々な人物との共同作業で交わされた数多くの会話を通じて紡ぎ出されたものである。
(2007年)

目次

青く鳴いたカエル

第1章 多芸多「彩」なアルビノ
家族の中の異星人
共感覚の興亡
盲人は、「緋色」を聞きとることができるのか?
チキンのとがりが足りない

第2章 諸感覚の力
赤ちゃんの騒がしい世界
音と映像が衝突する場所
暗闇での夕食から「肥えたアヒル」へ

第3章 もう一つの現実
ルビコン河を渡る―多感覚知覚から共感覚へ
「O」はなぜ白く、ショパンはなぜ黄色なのか?
共感覚のスイッチを切ることは可能か?

第4章 額の中のスクリーン
幻の触覚
多種多様な空間
考えるための空間
π人間

第5章 諸感覚の彼方へ
視触覚
共感覚はなぜ存在するのか?
創造性仮説
言語進化とのかかわり
超記憶との関係
差異を生きる

訳者あとがき
参考文献

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 心理
感想投稿日 : 2012年8月19日
読了日 : 2012年8月19日
本棚登録日 : 2012年8月19日

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