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大切なのは意志と勇気。それだけでね、大抵のことは上手くいくのよ―“姉さん”に拾われて“半沢良”になった僕。ある日届いた一通の招待状をきっかけに、いつもと少しだけ違う世界が、ひっそりと動き始める。深夜のガソリンスタンドが世界を照らし出す、都会の青春ファンタジー。第三九回文藝賞受賞作。
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半沢良は誰なのか。読み進んでいけば謎が解けるのかと思ったが、そういうわけでもなく、物語は、半沢良を日々創り上げる過程が淡々と描かれている。そしてその結果が「リレキショ」に書き加えられ、さらに半沢良になっていく。名前や生年月日、生い立ちやさまざまなことは、生きていく上での必須条件ではなく、いまをどう生き、周りとどう関係性を築いていくかが大切なのだと思わされる。半沢良が本当は誰なのか、とてもとても知りたくなるが、それはたぶん知らぬが花でもあるのだろう。遠くて近く、とても寂しくてあたたかい。胸の奥がきゅんとする一冊だった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
な行の作家
- 感想投稿日 : 2020年5月12日
- 読了日 : 2020年5月12日
- 本棚登録日 : 2020年5月12日
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