令和元年のテロリズム

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  • 新潮社 (2021年3月26日発売)
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感想 : 8
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川崎での連続通り魔殺人事件、元農水事務次官による長男殺害事件、京都アニメーション放火殺人事件。
元号が変わった直後、就職氷河期世代が加害者・被害者となる凄惨な事件が連続して発生。
平成の時期に、掬い上げられることの無かったロスト・ジェネレーションの苦しみが堰を切って社会に牙をむいたかのよう。
平成からずっと、「自己責任論」が渦巻く社会で、下層で苦しむ彼らが凶行に及んでしまうのは、彼ら個別の特例なのではなく、社会全体が当事者意識を持って向かい合う必要があるのだろう。
同じ著者が書いた「ルポ・川崎」でもあるように、一度貧困に落ちてしまった家族が這い上がるために、貧困の渦から抜け出すための社会保障・福祉がもっと充実していれば、またそれに助けを求める行為に"後ろめたさ・悪"を感じさせない空気があれば、これらはまた違った結末を迎えていたのではないだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ルポルタージュ
感想投稿日 : 2021年5月5日
読了日 : 2021年5月5日
本棚登録日 : 2021年5月5日

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