「アインシュタイン方程式を読んだら『宇宙』が見えた(講談社ブルーバックス、深川俊太郎・著)」の数式を追いかけるうち、自分が今なにをしようとしているのかが分からなくなることが度々あったため、補助線として購入。数式から理屈を読み解くのも確かにスリリングで面白いが、「理系の言葉」に不慣れな門外漢にはこのような「タテ書き」の解説本もあったほうが良い。前述の深川本に出てくる計量テンソル、リッチテンソル、クリストッフェル記号などの難解な概念について、それぞれがアインシュタインの重力方程式の中で担う役割を平易な言葉でまとめてくれている。
ビッグバンから38万年後という「一瞬」の後に起こった急速なインフレーションにより、それ以前に発生した光は「宇宙の地平線」の向こう側に閉じ込められてしまい、もはや観測不可能。しかしこのインフレーションを引き起こしたインフラトン場(正体は今なお不明)の量子ゆらぎが、アインシュタイン方程式の「時空」即ち計量テンソルgμνの量子揺らぎを引き起こしたという。これが宇宙にまだ質量がない時代であるにもかかわらず生じたとされる「原始重力波」であり、もしこれをビッグバンの残光である「宇宙背景放射」の中から観測できれば、宇宙の地平線の向こう側、即ちこれまで観測不可能とされたインフレーション時代の宇宙の姿を掴むことができるというわけだ。
やや難しいところもあるが、全般的に平易な書きぶりで読みやすい。「からくり」シリーズは他にも何冊か出ているが、この著者の巧みな伝達の仕方が読者に受けているのだろう。
- 感想投稿日 : 2021年8月30日
- 読了日 : 2021年8月19日
- 本棚登録日 : 2021年8月19日
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