面白かった。
難しいというか、よく分からない部分が沢山あるのに、なぜだか心地よく読める。
作者の文体からか、登場人物の温度の低い感じ、何かを一枚隔て見ているような客観的で冷静な語り、そんな感じが好きだなと思った。
仮想通貨を掘り進める主人公、大手有名会社に勤める恋人。大きな社会という中で、世界を支えたり動かしたりしている人。世界に触れているのにどこか無機質で他人事。でも。私たちは、大きな世界の中で効率的に、利益だけを追求して…そのために生きているんじゃない。誰かに価値を見出されて、それを証明してもらうために生きてるわけじゃない。でも、世界に影響を及ぼしたいとか、何かを残したいとか、生きてる意味のようなものを、確かに感じたいと思ってしまう。それが人間なのかもしれない。だから人はこうやって表現したり、作り出したり、働いたりするのかな。
その力が尽きてしまったら、人間としての営みにとらわれる必要もないのかもね。そしてもっと自由を求めるのかもしれない。
失敗作と呼ばれるがらくたたちは、自由を求めた証。私にとっての、誰に見せるでもなく書いてる日記や、披露する場のない演奏活動も、独りよがりだけどそこに確かに存在する自由なのかもしれない。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年3月31日
- 読了日 : 2021年3月31日
- 本棚登録日 : 2021年3月31日
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