高齢者向け共同住宅”シービュー・コート”に住む本好きの老婦人ペギー・スミスが亡くなった。
第一発見者のウクライナ出身介護者ナタルカは、ペギーの名刺に記されていた”殺人コンサルタント”の肩書、ペギーが保有していた本の数多くに彼女への献辞が添えられていることに不審な臭いをかぎ取り、ハービンダー部長刑事(前作『見知らぬ人』でも事件を解決に導いた、同性愛者で実家暮らしのシーク教徒女性刑事)に相談に行く。
決しておざなりに扱われたわけではないけれど、ナタルカは好奇心の膨らみを抑えきれず、ペギーの友人で75歳を越える老紳士エドウィンと、元修道士という異例の経歴を持つ皆の行きつけのコーヒーハウスのオーナー、ベネディクトの3人で素人探偵調査に乗り出す。
前作は作中作とその中で記されるキーワードが牽引する良作ビブリオミステリだったが、本作はまた別の角度からのビブリオミステリ。
ただ、むしろビブリオというよりも、どちらかというとダニエル・フリードマンだったり、リチャード・オスマンのような壮年活躍ミステリ色の方が濃いかな。
全く違う様相のミステリをまさかのハービンダー刑事のシリーズものとして仕立ててくるとはね。
もはやハービンダーシリーズといいつつ、主役はその他事件関係者が務めるというように感じた。
2021年度CWAゴールドダガー賞最終候補作とのこと。
受賞したのはクリス・ウィタカーの『We begin at the end(邦題:我ら闇より天を見る)』。
今後の活躍も期待したい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
海外ミステリ
- 感想投稿日 : 2023年2月25日
- 読了日 : 2023年2月18日
- 本棚登録日 : 2023年2月25日
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