ポピュラ-サイエンスの時代: 20世紀の暮らしと科学

著者 :
  • 柏書房 (2006年3月1日発売)
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本棚登録 : 34
感想 : 5

タイトルや表紙から、20世紀のレトロな科学技術道具のコレクションかと、気楽に手に取った。ところが、読み始まるとこれが全く思い違いであり、少々面食らった。
 取り上げられる道具は、確かに「電動歯ブラシ」から「高速度撮影機」まで、今では当たり前のように普及したり、時代遅れになって消えていったものばかりである。しかし、各々の道具とそれが産み出された社会的背景を語るときの言葉は、「身体性」「日常的身振り(ハビトゥス)」「バイオ権力論」「快楽」「性差」「幻想」などなど、いわゆる科学史的な記述スタイルとは全く異なっている。つまり、これは科学技術の解説史として読むべき本ではなく、社会に提供された科学技術が、大衆文化の中でどのように振る舞ったのかを分析する本なのである。著者のことばで言えば、《20世紀の現代的神話である「科学イメージ」のディスクール分析》(p.9)なのだ。
 そのため本書は、M・フーコーなどの現代思想に多少とも興味がある読者でなければ、読んでみても迂遠な解説と感じるだけでピンとは来ないだろう。
 個人的には、「戦争と平和の円環構造――空中広告機」(pp.182-193)で語られている、DDTの空中散布に関する当時の「科学的」言説が興味を引いた。R・カーソンが『沈黙の春』を書いて闘わなければならなかった、当時の空気がよく分かる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本(仕事)
感想投稿日 : 2013年1月5日
読了日 : 2007年3月26日
本棚登録日 : 2013年1月5日

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